2024年7月17日(水)

田部康喜のTV読本

2020年4月16日

「経済活動を維持した上で収束を図らなければ」

 北海道大学教授の西浦氏が、二日間にわたって徹夜して、その解を探り当てた。国内の感染者110人の分析の結果、8割は誰にも感染させていなかったのである。残りのほとんどが1人に対する感染だった。驚くべきは、3人の感染者だった。1人は4人に、1人は9人に、あと1人は12人にも感染させていた。クラスターの存在が浮かび上がる。

 感染を広げた人たちの属性は、年齢や病気の有無からは手掛かりはなかった。別の視点から共通性が浮かび上がった。飲食店であり、スポーツジムにいった行動である。密閉した空間で、大声で飛沫感染が起きた可能性がある。閉鎖空間の感染率は、通常の18.7倍にものぼることがわかった。

 「密閉」「密集」「密接」の3密を避ければ、感染も避けられる、というのが、クラスター対策班の新型コロナウイルスの最初の対策だった。そして、クラスターを発見して、徹底的につぶしていくことだった。

 対策班が恐れていたように、第1波は抑えられたが、欧米からの帰国者による第2波の感染者が、東京を中心として広がってきた。さらに、クラスターをつぶそうにも、関連づけられない「孤発例」が増えてきたのである。

 感染症に長らく携わってきた、押谷氏の社会に対する哲学的考えが胸を打つ。

 「いかにして、社会や経済活動を維持したうえで(新型コロナウイルスの)収束を図るか。都市を封鎖して、再開し、また封鎖するようなことがあれば、経済も社会も人の心も破綻する。若者は将来希望する会社は倒産し、中高年は安らぎの場所を失う。その先にあるのは、闇です。そんなことをやってはいけない」

 さらに、押谷氏はいう。

 「武漢のような闇から抜け脱せるのか。世界の地域で同じ方向を向けば、収束の方向は見いだせる。社会活動をもとに戻すのは、世界の連帯が必要だ」

 「(新型コロナウイルスを)封じ込めるのは難しい。つきあっていかなければいけない。第2波を起こしてはいけない。なんのマークもなく日本に入ってくるのを防ぐのが大事である」と。

 最前線に立つ科学者たちを支援するのは、政治や社会、そして我々の役割である。

  
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