海野素央の Love Trumps Hate

2020年4月29日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「取引のカード」と「責任逃れ」

 トランプ大統領は記者会見で、連邦政府は人工呼吸器1万台を確保していると強調したうえで、ゼネラル・エレクトリック(GE)が呼吸器の生産に踏み切ると述べました。

 「どの州にいくつ人工呼吸器を支給するかは自分の判断だ」という隠されたメッセージを、トランプ大統領は発信しています。州知事の足元を見ているトランプ氏は、人工呼吸器を「取引のカード」にして、早期に経済活動の再開をするように州知事に圧力をかけました。加えて、「州の経済活動再開は、自分だけに決定の権限がある」と強調しました。

 ただ、経済活動の再開の道筋を示した新ガイドラインを発表すると、トランプ大統領は「再開は知事次第だ」と語り、態度を一変したのです。新ガイドラインでは14日間連続して感染者数が減少することが、経済活動再開の条件になっています。

 おそらくトランプ大統領には、州知事がこのガイドラインに従って経済活動を再開してV字回復すれば、自分のクレジット(手柄)にする思惑があります。逆に、州の経済活動を再開して感染者数及び死者数が増加した場合、トランプ氏は「ガイドラインの運用の仕方が悪い」と非難して、知事のせいにする可能性が高いでしょう。要するに、保険を掛けた言い方をして、「責任逃れ」をする準備を整えたと解釈できます。

「世界のリーダー」の演出

 トランプ大統領はグローバルに感染拡大が続く中でも、「米国第一主義」の旗を掲げていると見られています。ところが、ここにきて中国に対抗するためか、あるいは自分に対する批判をかわすためか、トランプ氏に変化が生じています。

 新型コロナウイルスの発生源とされる中国は、他国にマスク及びウイルス検査キットを支給してイメージアップに努めています。いわゆる、「マスク外交」及び「検査キット外交」を通じたプロバガンダ作戦に出ています。

 一方、トランプ大統領は人工呼吸器をメキシコ、ホンジュラス、エルサルバドル、エクアドル並びにインドネシアに提供すると述べて、「呼吸器外交」を通じてコロナ危機に直面している世界を助けているという演出をしています。ただし、中米諸国を対象にして人工呼吸器を支給する裏には、米国の国境を目指してくる移民に対する対策強化が交換条件にあるのかもしれません。

 仮に日本において新型コロナウイルス感染による重症患者数が増加すれば、トランプ大統領から人工呼吸器の支給を受けることになるかもしれません。その際、日本は米国産の軍事装備品の購入と抱き合わせになる覚悟が必要です。

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