2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年4月29日

 今回のテーマは、「トランプvs.コロナ、勝者はどちらか?」です。2020年米大統領選挙の投開票まで半年余りになりましたが、選挙戦は「トランプvs.バイデン」というよりも、「トランプvs.コロナ」の対立構図が鮮明になってきました。ドナルド・トランプ大統領は、新型コロナウイルスを相手にどのように選挙を有利に進めていこうと考えているのでしょうか。本稿では、トランプ大統領のコロナ対策を選挙の文脈で分析します。

(REUTERS/AFLO)

「反中国感情」の上昇

 米調査機関ピュー・リサーチセンターの世論調査(20年3月9~29日実施)によれば、米国民の中国に対する否定的な見方の割合は、関税及び貿易問題に新型コロナウイルス感染拡大が加わっために、急上昇しています。17年の47%から約20ポイントも上がり、66%になりました。

 党派別にみると、共和党支持者の72%、民主党支持者の62%が中国を否定的に捉えています。共和党支持者は民主党支持者と比べると、中国に対して10ポイントも否定的です。ただし、17年に実施した同世論調査の結果と比較すると、民主党支持者の中国に対する否定的な見方は、41%から21ポイントも伸びています。民主党支持者においても、反中国感情が高まっているという意味です。

 これに伴って、習近平国家主席に対する不信感も上昇しています。18年は50%でしたが、20年は71%まで跳ね上がりました。

 上の調査結果はトランプ大統領にとって、朗報であることは間違いありません。トランプ氏は、前回の大統領選挙よりも中国叩きは票に結びつくと読んでいるでしょう。

価値ある「中国叩き」

 トランプ大統領は世界保健機関(WHO)が「中国拠り」であると批判し、同機関への資金拠出を一時停止して組織改革を求めました。トランプ氏に対するコロナ対応の批判を中国にすり替える意図があることは明らかです。加えて、「WHOと中国」をセットで攻撃して、反中国感情が強いトランプ支持者を結束させる狙いもあるでしょう。

 ほぼ連日ホワイトハウスで行われるコロナ対策の記者会見で、トランプ大統領は自身を「中国に最も厳しい大統領」と繰り返し呼んでいます。共和党支持者のみならず、民主党支持者にも突き刺さるメッセージです。

 さらに、トランプ大統領は新型コロナウイルスの発生源を特定しようとしています。標的となっているのは病原体を扱っている中国科学院武漢ウイルス研究所で、同研究所の調査の必要性に言及しました。

 トランプ大統領にアイデンティティを持っている反中国の支持者が、この研究所でコロナという生物兵器を開発して世界にばらまいたと信じても全く不思議ではありません。つまり、中国叩きは支持者固めと拡大の双方から、トランプ氏にとって極めて価値が高いといえます。


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