2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2020年5月8日

サウジとの確執

 こうした暗躍ぶりが取り沙汰される割には、皇太子は国際的にはあまり目立たない存在だ。「サウジ皇太子とは違い、あえて力を誇示するような表立った言動は控えている。それがアブダビ皇太子の賢いところ。コロナ以後を見据えた長期的な戦略に基づいて行動している」(同)という評価だ。

 だが、アブダビ首長国のザイド家とサウジのサウド家は元々、ライバル関係にあり、仲は悪かった。サウジがUAEの独立をなかなか承認しなかったという不和の歴史がそれを実証している。ここ数年、皇太子同士が親密だったのはトランプ大統領を引きずり込んで、イランと敵対させることが自分たちの身を守り、自分たちの利益に合致するとの共通認識があったからだ。

 しかし、イランを武力でつぶすことは不可能なことが明確になり、UAEがイランとの修復に本格的に動き出したことで、両皇太子の間にすきま風が吹き始めている。加えてイエメン内戦をめぐる思惑の違いも鮮明になっている上、コロナ禍による石油価格の暴落で双方とも物心の余裕がなくなっている。いつライバル同士の確執が表面化してもおかしくない状況だ。両皇太子の動向から目が離せない。

  
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