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2020年5月13日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

母国に戻れず、アルバイトもできず

 留学ビザの在留期限は人によって異なる。すでに日本語学校を卒業していても、学校在籍時に取得したビザの期限が6〜7月まで残っている者もいる。そんな元留学生は、教育機関に所属していなくても10万円の支給対象となる。クオン君も留学ビザの期限があと3日遅ければ、給付金が受け取れた。悔しさが募るのも当然だろう。

 「10万円をもらえず残念ですが、それよりもアルバイトができないので困ります」

 クオン君は大学進学を諦めて以降、アルバイトの量を減らしていた。学費を貯める必要がなくなったからだ。これから3カ月間、アルバイトなしで暮らすとなると、わずかな貯金は遠からず底をつく。

 彼はベトナム人の友人と狭いアパートをシェアしている。家賃の負担は光熱費を含め月2万円ほどだが、食費などで月に最低でも5〜6万円は必要となる。そして家族からの仕送りも望めない。

 「日本で大学に行きたかった。でも、日本語学校にいじわるされて行けなかった。それが悔しいです」

 彼の夢は、日本語学校の横暴によって叶わなかった。そのうえ、さらに日本で苦しい思いをすることになったのだ。

 コロナ禍で苦境を強いられる外国人は少なくない。とりわけ困っているのは、学校を卒業後、母国へ戻れず、しかも日本でアルバイトもできない立場に追い込まれている元留学生たちである。

 せめて給付金の10万円があれば、生活の助けにはなった。それすら受け取れず、クオン君は悶々とした毎日を送っている。在留期限を迎える7月にコロナ禍が収束し、彼がベトナムへ戻れる保証はない。

  
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