海野素央の Love Trumps Hate

2020年6月9日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「アメリカの戦場」

 故ジョン・マケイン上院議員(共和党・西部アリゾナ州)は、民主党議員と妥協点を探り、超党派で法案の実現を図った議員でした。マケイン議員及びジョン・ケーシック前知事(共和党)の選挙参謀等が立ち上げたリンカーン・プロジェクトは、米国がリンカーン元大統領の時代以来、最大の「分断の危機」に直面しているとみています。マティス前国防長官と同様、リンカーン・プロジェクトはリンカーン元大統領のように「分断」ではなく、「団結」のメッセージを発信する大統領を求めています。

 リンカーン・プロジェクトは6月3日、「アメリカの戦場」と題するネット広告を公開しました。この広告は抗議デモを行う市民と、催涙ガスやゴム弾を使用して力で鎮静化を図る警察官及び州兵との衝突の場面を「戦場」に喩えています。

 抗議活動家に対して、トランプ大統領は自身のツイッターを使って「略奪が始まれば、発砲が始まる」と投稿しました。「アメリカの戦場」はこの「脅し」のフレーズを取り上げています。

 余談ですが、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は新型コロナウイルスの対策として打ち出した移動制限を破った場合、違反者を射殺すると警告しました。トランプ・ドゥテルテ両大統領は、独裁的な思考様式を備えているかもしれません。

 話を戻します。トランプ大統領は州知事とのビデオ会議で、米軍派遣による早期の鎮静化を望み、「支配しなければ、時間の無駄だ」と語気を強め、圧力をかけました。ネット広告には、トランプ大統領のこの言葉も含まれています。

「アメリカ対トランプ」

 「アメリカの戦場」は「選択のときだ!アメリカか?トランプか?」と視聴者に投げかけて締めくくっています。このメッセージこそバイデン前副大統領が発信すべきものです。

 というのは、集会に参加すると分かるのですが、トランプ大統領が支持者の熱意においてバイデン氏を圧倒的にリードしています(『トランプ再選は確実!?大盛況のトランプ集会』『目の当たりにした興行師トランプの凄み』参照)。

 しかも、米ワシントン・ポスト紙とABCニュースによる共同世論調査(2020年5月25-28日実施)によれば、トランプ支持者の84%が、11月3日の投開票日にトランプ大統領に「必ず投票する」と回答しました。それに対してバイデン支持者の68%が、バイデン前副大統領に「必ず投票する」と答えています。トランプ氏がバイデン氏を16ポイントも引き離しています。

 ちなみに、16年3月6日の同共同世論調査ですが、72%がヒラリー・クリントン元国務長官に「必ず投票する」と回答しました。クリントン氏は、バイデン氏よりも上回っています。

 この不利な状況を覆すには、バイデン前副大統領は「トランプ対バイデン」の対立構図ではなく、「アメリカ対トランプ」の構図を演出し、それを先鋭化することが不可欠です。そうすることで、全国に拡大した人種差別反対の勢い(momentum)を投開票日まで継続させ、バイデン氏に有利な人種問題を大統領選挙の主要な争点にすることができるからです。

  
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