2024年12月12日(木)

今月の旅指南

2012年6月29日

 燃え盛る松明(たいまつ)から火の粉が振り注ぐ中、神輿(みこし)が川や海、火の中に投げ込まれる。打ち鳴らされる太鼓や鉦(かね)の音とともに、炎の周囲をキリコ<切子灯籠(きりことうろう)>が乱舞する。石川県能登町宇出津(のとちょううしつ)に伝わる「あばれ祭」は、その名の通り、神輿やキリコが大暴れする迫力満点のお祭りだ。

 祭りの起源は、かつてこの地に蔓延した疫病を鎮めるため、京都の八坂神社(祗園社)より牛頭天王(ごずてんのう)を勧請、青い蜂に姿を変えた神霊が人々を刺したところ病が治り、喜んでお祝いをしたことにあるという。

担ぎ手も川に入って神輿の “あばれ” を繰り広げる

 能登町ふるさと振興課の野村洋さんによると、

 「牛頭天王とは荒ぶる神、スサノオのこと。そのため祭りでは大暴れをするほど喜ばれ、みんなに幸運をもたらすといわれています。2つの神輿は地面にたたきつけられたり、水の中や火の中に放り込まれたりするので壊れてしまい、毎回新しく作られています」

 各町内から参加するキリコは、高さ6メートルほどのものが中心で、子供用の小型のキリコも含めると四十数本になる。それぞれ違う文字が書かれていたり、時代絵巻を基にした彫り物を飾ったり、町内ごとに意匠を凝らしたキリコを見比べてみるのも楽しみの1つ。キリコは町に唯一残る専門の大工の手によって、丸1年かけて作られ、15年に1度くらいの頻度で作り直されるそうだ。

 2日間にわたって開催される祭りの山場となるのは、初日に能登町役場前のいやさか広場で繰り広げられる、5本の大松明の周囲を巡るキリコの乱舞。そして、翌日巡行する2つの神輿が川に投入され、暴れまわるシーン。

 「火を使うお祭りなので、やはり夜の場面がハイライトとなります。宇出津の人々にとっては、このお祭りが1年の一大行事となっており、お盆や正月には帰省できなくても、お祭りには帰ってくる人が多いのです」

 荒ぶる神に手向ける最上のおもてなしとなる、あばれ祭。その熱気を間近で感じてみたいものだ。


あばれ祭
<開催日>2012年7月6日~7日
<会場>石川県能登町・宇出津一帯(北陸本線金沢駅からバス)
<問>能登町ふるさと振興課 0768(62)8532
http://www.town.noto.lg.jp/www/tour/result.jsp?genre_id=78

◆ 「ひととき」2012年7月号より

 

      

 





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