Washington Files

2020年6月18日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

信頼性の確立が不十分なまま

 ところが、わが国防衛施設庁は前年の2017年に、すでにこの「SM-3BLOCK」すなわち「イージスアショア」配備計画を決定ずみであり、その後は、実験成功時は公表され、失敗した場合は秘密裏にするなど、信頼性が十分に確立されないまま、今日に至ったと言うことができる。

 さらに「ミサイル防衛」そのもののコンセプトについても、以前から多くの問題点が指摘されてきた。

 そのひとつは、米軍が迎撃ミサイルの「開発」から「配備」に至る過程で実施してきた「実験」の信頼性についてだ。

 その実態は今日にいたるまで「極秘」とされ、詳細はつまびらかではないが、事情に詳しい専門家たちがこれまでに明らかにしてきたところによると、迎撃テストの際は例外なく、標的となるべき模擬ミサイルについては、あらかじめ正確な発射地点、秒単位の発射時間などの重要情報が迎撃側のミサイル・コンピューターにインプットされ、計算通りに軌道に乗り、予定推定時刻に飛来してくる目標に向けてミサイルが発射される。このため、命中精度は高くなる。それでもたびたび、標的を正確にとらえられず失敗に終わったケースが少なくない。

 さらに、過去の実験では、標的用模擬ミサイルには、発見されやすいように「ホーミング・ビーコン(追尾用位置表示装置)がつけられ、情報を流しながら飛行を続けた末に迎撃ミサイルによる被弾を待つケースがしばしばだった。いうまでもなく、GMD実験の成功率を高めるのが狙いだった。

 問題は、このような‟仕組まれたシナリオ“の下で迎撃ミサイルの「有効性」がある程度立証されたとしても、果たして実戦でどれだけ威力を発揮できるかだ。

 例えば、北朝鮮は今日、日本などを標的にした短・中距離ミサイル多数を複数の基地に配備していることが知られているが、もし、両国間で緊張が高まり、同国指導部が対日攻撃を決断した場合、予め日本側にどの基地から発射するかについての事前通告などまったくあり得ない。その正確な日や何時何分何秒の時間もわからない。

 それでも自衛隊迎撃ミサイル部隊のレーダーサイトには、北朝鮮の複数の配備基地に関する情報が予めインプットされているため、ある程度の監視体制を維持することは理論上、可能だ。ただ、有事には北朝鮮による「ミサイル発射」情報を入手次第、どの基地からかを直ちに割り出し、日本の標的までの推定到達時間10分前後の間に迎撃ミサイルを発射、想定される飛来ミサイルの軌道に正確に照準を合わせた瞬時の対応が不可欠となる。

 この点、米軍が過去に行ってきた実験では、標的となる模擬ミサイルの発射地点は例外なく、迎撃部隊に事前に予告されてきた。また、複数の発射場から同時発射された模擬ミサイルを標的にした実験は、これまでに判明した限りでは一度もない。

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