2024年11月22日(金)

Washington Files

2020年6月18日

移動式ミサイルの脅威

 さらに厄介なのが、北朝鮮が近年、開発したと伝えられる移動式ミサイルの脅威だ。

 韓国軍合同参謀本部は昨年7月31日、北朝鮮が移動式発射台を使った射程250キロ程度の短距離弾道ミサイルを発射したと発表している。もし今後、この移動式ミサイルが多数実戦配備された場合、迎撃に備えるための北朝鮮内のミサイル配備状況を把握することが不可能となり、「イージスアショア」での対応もお手上げとなりかねない。

 加えて、北朝鮮は日本近海にも遊弋できる潜水艦発射ミサイルの開発にも乗り出しているが、これも一種の「移動式ミサイル」であり、脅威は増大する一方だ。

 このほか、「ミサイル防衛」では、敵国がミサイル発射の際、同時に多数の「おとり」飛翔体を同一軌道に乗せる、追尾レーダー波を妨害する金属片「チャフ」を迎撃ミサイルが接近する直前に散布する、などの措置を講じた場合、標的に対する追尾、照準が極めて困難になることなどの問題が多数指摘されている。

 河野防衛相は今回、「イージスショア」の配備停止発表に際して、「SM-3BLOCK」の開発には日米両国ですでに2200億円以上かかったことを明らかにした。今後、同型ミサイルを実戦配備した場合、さらに7000億円以上の予算計上が必要になるとも言われている。

 読売新聞報道によれば、配備停止に関連して、政府高官が「ブースター問題の解消はめどが立たず、候補地も白紙となる。イージスアショアの配備はもう無理だろう」と語ったと報じている。

 この点について、日本の一部のメディアでは、米政府が対日批判を強めるとの観測も伝えられる。

 しかし、アメリカが開発に乗り出した「ミサイル防衛」計画そのものが、当初から多くの技術的問題を抱えたまま今日に至った経緯があるだけに、新たに明らかになったブースター落下地点への日本側の懸念は当然であり、これを理由に配備計画が全面停止となったとしてもやむ得ない措置とみるべきだ。もし、米側が対日批判に出るとしたら、的外れだ。

 防衛省としては、毅然たる態度で、「イージスショア」に代わるミサイル防衛措置の検討に急ぎ着手することが求められる。

  
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