2024年6月16日(日)

VALUE MAKER

2020年12月28日

 旅館の日頃は入れない場所を探検して、最後は大浴場で入浴して解散というプログラムに、子どもたちは大満足だった。京都を訪れる子連れ外国人向けのガイド事業者に協力を求め、英語のプログラムなどを担当してもらった。話を聞きつけた京都北山の「マールブランシュ」からはお菓子の差し入れもあった。1日15人、1週間のプログラムだったが、「地域とのつながりを実感できた」と雅世さん。確かに、地元の人にとっては地域の旅館にはなかなか足を踏み入れる機会はない。

7月から通常営業へ

 一方で、京都の旅館は、全国全世界の人たちと京都をつなぐ接点でもある。「いつか住みたい町として京都が上位に来るのは、修学旅行で訪れた原体験が大きいのではないでしょうか」と雅世さんは言う。

 6月いっぱいで「旅館の宿弁」は終了し、7月からは平常に少しずつ戻っていけることを期待する。政府の「GoToキャンペーン」にも期待を寄せるが、それ以上に、現状「延期」になっている修学旅行が「中止」にならないことを祈るばかりだ、という。

 もともとインバウンドに依存することはリスクが高いと見ていたこともあり、年間の客数は2割以下だった。それでもコロナ後の旅館業は今までとはやり方が大きく変わることになると見る。減った客の取り合いや、今なお進み続けるホテルの開業ラッシュが価格競争になることも予想されるが、それには絶対に巻き込まれたくないという。

 「やはり原点に帰ることだと思います」。京都に旅行者が押し寄せていたここ数年、「目の前のお客様を見ているつもりで、しっかりとは見ることができていなかった気がします」と雅世さんは言う。目の前の客が何を求めているのか、一人ひとり丁寧に対応することができていたか、と今振り返っているのだという。

元銀行員で2年ほど前に綿善に入社した夫の重見さんは、同じサービス業でも「銀行の仕事とは全然違います」と苦笑する

 天保元年(1830年)創業の綿善はもともと富山の薬売りが創業者。京都へやってくる呉服業者などに宿を提供したのが旅館を業とするきっかけだったと言う。「薬売りがルーツなので、人の薬になるような旅を提供できる旅館にしたい」と言う。

 最終的にはネット予約などは受けず、一人ひとりの旅のスタイルを聞いた上で、その手伝いをするような旅館になっていきたいという。そうすることで、きちんと付加価値を確保し、1000万円の給料を払える旅館に変わっていくということだろう。

写真=湯澤 毅

  
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◆Wedge2020年7月号より

 

 

 

 

 


 
 
 
 
 
 
 

 

 


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