オトナの教養 週末の一冊

2020年7月9日

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 マスクについても、日本と台湾では大きな違いがみられた。日本では〝アベノマスク〟が世帯に2枚配られ、厚生労働省によれば「概ね配布終了となっている」。一方、台湾ではマスク製造装置を政府が買い上げ、民間企業に生産を委託した。なおかつ、国民にどれだけのマスクが必要になるのか試算して、生産能力を増強した(『台湾「マスク・ポリティックス」に見るコロナ時代の危機管理https://wedge.ismedia.jp/articles/-/18945』)。さらには、日本でも有名になった「天才IT大臣」ことオードリータン氏が、マスクの在庫の見える化、予約販売などのシステム構築を行った。

「マスクの必要性は、SARSのときに在庫が枯渇した経験が生きていると思います。製造機械を政府が買い上げ、業者に作ってもらい、完成したマスクも政府が買い上げて、住民に配る、それぞれのフローのなかで、担当する意思決定者(閣僚)が迅速に対応しました」

重要なポストは「プロ」が務める

 台湾で目立つのは、リーダーの意思決定と、コミュニケーション能力だ。日本の場合、閣僚は議員が務めることが多いが、台湾の場合、専門家がそのポストに就くことも珍しくない。情報発信についても、日本のように専門家が行うのではなく、専門家の意見をもとに政治家が行うことが徹底されている。

「コロナ禍に限らず、台湾は厳しい国際環境のなかに置かれています。だからこそ、重要なポストにはプロをつけるという緊張感があります。議院内閣制の日本においても、特に専門性の問われる官庁の大臣や副大臣、政務官ポストについては、その任用について専門家を入れる議論を始めてもよいのではないかと思います。

 奇しくも台湾ではコロナ禍によって、思わぬところからいい人材が出てくる結果となりました。それまで知名度のなかった経済部長、副総統など、目立たない人が大活躍しました。これは、民主主義の力です。いい人材を起用して職務を果たしてもらわないと、次の選挙によって国民から報復される。だから、政治も頑張る。社会のほうも、まずは信頼する。しかし、ダメなら選挙でしっぺ返しをする。このような緊張関係こそが民主主義の姿であり、長い目でみて、台湾のコロナ対策に結びついたと考えています」

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