オトナの教養 週末の一冊

2020年7月9日

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台湾のソフトパワーを世界に

 日本で公衆衛生医は、臨床医によりも格下に見られる傾向があるが、台湾でも2003年のSARSまではそうだったという。

「SARSによって、公衆衛生に対する価値観の転換が図られたのだと思います。米国のCDC(疾病対策センター)を参考に、組織整備が行われ、緊急対応を行う中央病情指揮センターも作られました。感染症対策は、国内だけに止まらない仕事で、語学力、情報分析力など医療と違う領域をカバーできる人材が必要で、台湾ではSARS以降、公衆衛生方面の人材を育てていたことが功を奏しました。

 台湾では5月に『公衆衛生師』という資格を設け、危機の際には政府が任命して事態の対処に当たらせる仕組みを作りました。世界に対してモデルを示すことで、公衆衛生を学びたい人が台湾に来てくれるようにもなるかもしれません。台湾のソフトパワーを世界に売り出すことは、中国のハードパワーに屈しないことにもつながります」

「台湾の政治、歴史を研究してきたので、コロナ対策でだけではなく、全体像を包括的に描くことができた」という野嶋さん。確かに本書は、コロナを通じて、台湾という国の実相をより深く知ることができる一冊だ。

  
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