2022年11月27日(日)

Washington Files

2020年8月3日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

対中国戦略では「国際社会の結束」を呼びかけるという自己撞着ぶり

 第四に、ポンペオ長官は、中国と向き合うために「国連、NATO、G7、G20などとの団結した行動」の重要性を強調した。

 ところが、トランプ政権は当初から「アメリカ第一義」をスローガンに掲げ、国際協調路線には背を向けてきた。

 NATOとの関係について、大統領自身「冷戦時代の遺物」などと批判する一方、加盟各国の大幅な防衛分担増を要求、米欧間に亀裂を生じさせるきっかけとなった。また、欧州同盟の基軸であるドイツのメルケル首相に対する個人批判を繰り返すとともに、先月には、加盟諸国の批判をよそに、在独米軍の大幅削減方針を一方的に発表している。

 国連および国際機関についても、大統領は軽視政策をとり続けてきた。2018年10月、国際司法裁判の二つの国際合意からの離脱を発表したのに続き、翌19年11月には、地球温暖化対策の国際的取り決め「パリ協定」からの離脱を正式通告、さらに今年7月、コロナウイルス感染対策をめぐる意見対立を理由に「国際保健機関」(WHO)からの脱退まで正式通知したばかりだ。

 このような国際社会から批判を浴びる外交姿勢を取り続けながら、対中国戦略では「国際社会の結束」を呼びかけるという自己撞着ぶりは、もはや覆うべくもない。

 米国「外交問題評議会」上級研究員で元国務省高官のフィリップ・H・ゴードン氏は先月、外交・安全保障問題のウェブマガジン「War on the Rocks」への寄稿論文の中で、次のように指摘している:

 「中国と向かい合うアメリカの最大の利点のひとつは、中国が威嚇と経済的打算に基づく国際的支持しか得られていないのに対し、世界中で緊密な同盟・パートナー関係を維持してきた事実だ。だが不幸にも、トランプ大統領の同盟諸国に対する執拗な冷遇措置および“アメリカ・ファースト”綱領によって、同盟諸国の対米信頼感は深刻なダメージを受けてきた。同盟諸国など32か国を対象とした国際世論調査結果によると、トランプ外交に対する信頼度は、オバマ政権当初、74%だったのに対し、わずか29%にとどまり、習近平外交に対する信頼度を1%だけ上回った。ドイツ国民を対象とした世論調査では今や、『最も緊密なパートナー国』の対象として、アメリカ(37%)と中国(36%)がほぼ拮抗する状態となっている」

 「中国の経済的台頭は著しいものの、世界経済に占めるアメリカのシェアは24%、これに他の自由主義諸国の経済を合算すると60%を突破することになり、これら諸国と緊密な行動をとることが、中国に対処するためにはより効果的であることは明らかだ。トランプ氏がこれまでとってきたような、世界貿易機関(WTO)軽視・無視政策ではなく、メンバー諸国とともに、知的財産権、投資活動の公平性などについて中国に対し、ルール順守を一致して働きかけていくことが重要だ」

 「安全保障面でも、トランプ大統領は一時、中国のご機嫌伺い目的で台湾への軍事援助に及び腰になり、日韓両国に対しては、防衛分担を現状の5倍という法外な増加を要求し、受け入れなければ米軍撤退をちらつかせるなど、同盟関係を弱体化させ、中国を大胆な行動へと駆り立てる言動を繰り返してきた。

 しかし、今後、アメリカに新しい政権が誕生した暁に取るべきステップは、これら同盟諸国に脅しをかけるのではなく、共通の基盤に立って協議を重ね、アジア太平洋地域における中国の軍事的進出を抑止するための共同防衛パートナシップの確立にほかならない。そのためにも、わが国は(トランプ政権がとってきたような)孤立主義ではなく、もてる戦力を明確にアジアに振り向ける『リバランス』戦略をより一層徹底させていく必要がある」

 しかし、わが国にとって最大関心事は、もし、トランプ氏が再選された場合、このような理にかなった長期的ビジョンを持ったアジア政策を打ち出せるかどうかだ。果たして、目先の打算のみを念頭に置いたこれまでの「ディール外交」から脱却し、かつてレーガン大統領が唱道した「西側同盟の結束と連携」に立ち返るかどうかは、依然として不透明のままと言わざるを得ない。

  
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