--昔と今では饗宴は変わりましたか?
西川氏:昔の饗宴は閉ざされており、一般庶民はうかがい知ることができなかった。しかし、現在の饗宴は衆人環視のもとで行われている。たとえば、現在のようなユーロの金融危機の局面で、贅を尽くし、最高級のワインやシャンパンを飲んだりすれば、世間からの厳しい目にさらされるでしょう。
昔は世間とはかけ離れたものとして存在した饗宴ですが、今は世論がどう見ているかということを意識しつつメニューを構成する時代になっています。
--最後に、饗宴と我々の生活との共通点はありますか?
西川氏:饗宴というと我々とは遠い世界のことと思うかもしれません。しかし、多くのビジネスマンは接待などで「人をもてなすためにどうすればよいか」という同じ経験をしている。たとえば、人を自宅に招くとき、「寿司は『松・竹・梅』のどれがいいか」「それとも手料理でもてなすか…」と考えるでしょう。それを意識的に行うことでビジネスに役立てばと思います。たとえば、取引先相手の誕生年のワインや出身地の日本酒を用意することによって、もてなしに心くだいていることを相手に伝えることができます。それでビジネスがうまくいくことがあるかもしれません。我々サラリーマンは、それぞれの立場で饗宴と同じようなことをやっています。ですから、見方を変えれば、本書は幅広い層に参考にしていただけると思います。
西川 恵(にしかわ・めぐみ)
毎日新聞社外信部専門編集委員。1971年毎日新聞社入社。社会部を経て1979年外信部。テヘラン支局(82~84年)、パリ支局(86~93年)、ローマ支局(96~98年)。1998年から2001年まで外信部長。論説委員を経て2002年から現職。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、97年サントリー学芸賞)、『国際政治のキーワード』(講談社現代新書)、『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)など。フランス政府国家功労勲章受章。
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