2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年8月11日

鍵は米郵便公社総裁

 バイデン前副大統領を支持する貧困層の黒人及びヒスパニック系(中南米系)有権者に対する投票抑制が、トランプ大統領の「第2の逆転戦略」です。

 16年米大統領選挙でトランプ大統領と戦ったヒラリー・クリントン元国務長官は、自身のツイッターに同大統領が郵送による投票用紙配布の遅配などによって、郵便投票を困難にする可能性があると投稿して、強い懸念を示しました。クリントン氏はトランプ氏が郵便投票を混乱させるとみています。

 実は、今回の郵便投票で鍵を握る人物がいます。米郵便公社(USPS)のルイス・デジョイ総裁です。

 デジョイ総裁はトランプ大統領の大口献金者で、16年及び20年米大統領選挙において150万ドル(約1億5900万円)以上の献金を行いました。今年6月に政治任用により総裁の座を得ています。デジョイ氏は郵便投票対策のために、任用されたとみてよいでしょう。 

 トランプ大統領がデジョイ総裁と「陰謀」を企てることは否定できません。例えば、バイデン前副大統領を支持する貧困の黒人及びヒスパニック系に対して、郵便投票による投票用紙の配布を遅らせることは可能です。米国社会では、郵便番号(zip code:ジップ・コード)によって、富裕層と貧困層が住む地域が分かるからです。

本当の主戦場は「米郵便公社」

 トランプ大統領とバイデン前副大統領は激戦6州を中心に戦っていますが、本当の主戦場は米郵便公社です。

 トランプ政権を監視する米議会下院行政監視小委員会のジェリー・コノリー委員長(南部バージニア州第11選挙区選出)は、ケーブルテレビMSNBCとのインタビューで、デジョイ総裁はトランプ大統領の政治献金者で「クローン(複製)」であると指摘しました。そのうえで、デジョイ氏がトランプ氏のアジェンダ(重要な政治課題)を実行するというのです。

 そのアジェンダとは、バイデン支持者への投票用紙の配送を妨害して、彼らが投票できないようにすることです。デジョイ総裁はすでに、郵便配達人及び事務職員が超過勤務をして郵便物を配達しても残業代を支給しないように決定しました。デジョイ氏は「郵便公社の経営効率を高めるためだ」と議論していますが、このタイミングでの実施は郵便投票の投票用紙の配布を遅らせる意図があるとみられても当然でしょう。

 ウォーターゲート事件で辞任したリチャード・ニクソン元大統領の法律顧問であったジョン・ディーン氏も、トランプ大統領の郵便投票に関する言動に警告を発しています。ディーン氏は自身のツイッターにUPS、アマゾン、フェデックスなどの物流サービスを提供する会社も、投票用紙の配送をするべきであると投稿しました。

 加えて、ディーン氏は同じツイッターに「トランプが郵便サービスを破壊する計画を許すわけにはいかない」と、書き込みました。これほど、トランプ大統領と郵便公社との陰謀に対する警戒心が強いのです。


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