ハリスの特徴
筆者は19年8月、西部ネバダ州ヘンダーソンで開催されたハリス上院議員の集会に参加しました。ハリス氏は非常にエネルギッシュな人物で、支持者を鼓舞する能力に富んでいます。同氏には笑顔を浮かべながら、彼らに語りかけるコミュニケーションを行う特徴があります。
過去にビル・クリントン元米大統領は、選挙では支持者にエネルギーを与えることが極めて重要であると主張しました。ハリス氏は正にその能力とスキルを備えています。
バイデン氏は20年3月、中西部ミシガン州デトロイトで支持者を集めた集会を開催しました。以前述べましたが、この集会に応援に駆け付けたハリス氏を観察しました。率直に言えば、ハリス氏はバイデン氏よりも支持者を活気づけていました。
集会では支持者に向かって語りかけるハリス氏に対して、バイデン氏は下を向いてメモを読みながら演説をする場面があり、両氏のスタイルが対照的に見えました。
これまで繰り返し述べてきましたが、バイデン陣営の最大の課題は、支持者における熱意の欠如です。トランプ・バイデン両氏の集会に参加すると分かるのですが、トランプ支持者とバイデン支持者の熱意のレベルの差は明白です。ハリス氏はバイデン陣営の熱意のレベルを高めてくれるでしょう。
バイデンのハリスに対する期待
一般に副大統領候補は選挙結果に影響を及ぼさないと言われています。ただ今回の大統領選挙は例外になるかもしれません。というのは、バイデン氏のハリス氏起用には少なくとも3つの期待があるからです。
第1に、前述しましたがバイデン氏はハリス氏がバイデン陣営に熱意をもたらしてくれることを期待しています。
第2に、女性票の獲得です。米世論調査機関「ピュー・リサーチセンター」によれば、18年米中間選挙で女性の有権者の55%が投票を行いました。一方、男性の有権者は51.8%でした。女性の有権者は男性よりも投票率が高い傾向があります。民主党は女性票に依存しています。
バラク・オバマ前大統領は12年米大統領選挙で、56%の女性票を得ました。ヒラリー・クリントン元国務長官は16年大統領選挙で54%の女性票を獲得しています。ちなみにトランプ氏は42%でした。
バイデン氏はハリス氏起用によって、女性票を稼げることを期待しています。
第3に、黒人票の獲得です。黒人と白人の新型コロナウイルスによる死者数を比較してみます。黒人の10万人当たりの死者数は80.4人です(20年8月4日時点)。それに対して、白人は35.9人で2分の1以下になっています。死者数における「不平等」が顕著に現れています。
失業率においても人種間の不平等が明白です。20年7月における米国の失業率は10.2%です。ところが、白人は9.2%で全体よりも1ポイント低いのですが、逆に黒人は14.6%で4.4ポイントも高くなっています。
人種問題においては、周知の通り、「白人警察官VS.黒人」の対立構図が鮮明になっています。バイデン氏は支持者へのメールで取り上げた3つの歴史的危機において、特に黒人が犠牲になっている点を強く懸念しています。ハリス氏が弱い立場に置かれている黒人に寄り添って、不平等に訴えれば、彼らの票を得られると期待しているのです。
要するに、ハリス氏の役割は3つです。バイデン陣営の「熱意」の向上、「女性票」及び「黒人票」の獲得です。すべて選挙結果に直結しているわけです。