2024年11月21日(木)

WEDGE REPORT

2020年8月19日

 新型コロナウイルス感染拡大が収束の気配を見せていないアメリカ。ジョンズホプキンス大学の統計によると、8月17日現在の累計感染者数は542万1806人、そして死者数は17万0277人に上っている。

ローカルに人気のアラモアナ・ビーチパークも現在は閉鎖されている(筆者・撮影)

 ハワイ州では4月に一時期感染者数が増加したものの、その後すぐに毎日1桁代に落ち着いた。5月後半からは順調に経済再開が進み、これまで全米最少の感染者数と死者数を誇っていたハワイだが、7月後半から急激に感染者数が急増し始めた。ハワイ保健衛生局によると、7月27日になるとそれまでの最高記録となる59人を記録したのを皮切りに急激に増加し始め、8月1日には108人と初めての3桁台を記録。その後8月に新規感染者が急増し、8月7日には201人、8日には231人を記録した。

 同局統計によると、その後9日には153人、10日は140人、11日は118人と緩やかな下降線をたどり、収束に向かうものと思われたが、12日にはまた202人、13日には刑務所内のクラスター感染があり355人にジャンプした。過去1週間は新規感染者数が100~200人台の日が続き、8月17日現在、累計感染者数は5215人、死者は40人となっている。

 ハワイ州では現在も他国・他州から帰還するハワイ州民を含むすべての訪問者に対して到着後14日間の自主隔離を求める検疫制度を実施している。8月1日からは出発72時間以内に感染検査を受けて陰性だった場合、14日間の自主隔離期間免除とするプログラムを施行する予定だったが、イゲ州知事は7月13日、アメリカ本土で感染拡大が続いていることや、ハワイでもその当時多少の新規感染者増加がみられたことから、プログラムの開始日程を9月1日に移行することを公表した

 しかしその約2週間後、7月下旬からハワイ州内で急激に感染者が増加し始めたため、同プログラム開始時期が10月以降になる可能性も高い。一時期は間近かと思われていた観光再開はここに来てさらに遠のいてしまったようで、日本人観光客がハワイに帰ってくる日もまだまだ先のことになりそうである。

感染者増加で「半ロックダウン」状態に

 ハワイ州内における最近の感染者増加はほぼオアフ島内に限られており、オアフから他島への感染拡大を防ぐため、6月16日に解除されていた島間移動者の検疫が再び施行されることになった。そのほかにも、オアフ島では市営・州営の公園などが再び閉鎖されたほか、オアフ島では市長の命令により、「3密」になるケースが多いバーが一時閉鎖となっている。また、8月4日に開始されるはずだった公立校の新学年は8月17日に延期となり、9月11日までの最初の4週間は自宅でリモート授業によりクラスが実施されることになっている。

 しかし、今回は今のところショッピングモールやレストラン、その他のサービス業などが営業一時停止となったわけではなく、ロックダウンの規模としては3月後半から行われた前回の半分程度だ。また前回と違いトイレットペーパーなど特定の物資が不足するという状況は発生しておらず、住民の生活に特に支障が出ているわけではない。しかし、ロックダウンや島間を含む訪問者の自主隔離が続く状況下で、ハワイの基幹産業である観光業が再開できず、ホテルやレストラン等もフル稼働できないことから、失業者が仕事に戻ることが困難な状態に置かれている。そんな中で、7月31日に連邦政府による新型コロナウイルス失業者への週600ドルの特別給付金支給プログラムが失効した。

 ホノルル・スターアドバタイザー電子版の報道によると、生活コストが高いハワイでは多くの人々が通常の失業保険額では暮らせないため、一時解雇されたホテル従業員は迅速な仕事への復帰を希望しており、ホテル側は宿泊客と従業員の安全対策の強化を急いでいる。

家族間とコミュニティ内でクラスターが発生

 では、ハワイで新型コロナウイルスの感染者が突然増加した原因とはいったい何だろうか? 

 ハワイ州保健衛生局では毎日、ウェブサイトで前日の新規感染者数や死者数を公表しているが、普段はどの地域で何人感染者が出たかなどは公表しないため、一般市民はこれまで4カ月以上感染者数を抑制できていたハワイで突然増加がみられた理由や、感染拡大のパターンなどが分かっていなかった。

 しかし最近になって民族別の感染者が公表されたことにより、タヒチやトンガ、ミクロネシア、フィジー、サモアなどからハワイに移住してきた太平洋諸島出身者(パシフィック・アイランダー)の感染率が人口と比較して突出していることが判明した。

 8月8日付のホノルル・スターアドバタイザー電子版によると、ハワイ州の総人口のうち太平洋諸島出身者はたったの4%なのにもかかわらず、民族別に見た新型コロナウイルスの総感染者数では全体の30%を占めている。同記事によると、今回のアウトブレイクに限定した場合、感染者数の32%に上るという。

 同紙は、太平洋諸島出身者の移民はファーストフード店やリテールなど、対人コンタクトが多い職に就くことが多いと指摘。また数世代の大家族が同じ家に暮すことも多い。民族や家族間の付き合いが濃いことから、葬儀などのイベントがあると、アメリカ本土や太平洋諸島に住む親族を呼び寄せて大規模に行う場合も多いという。葬儀のようなイベントでは参列者が泣いたり、慰め合うために抱き合ったりすることも多いため、ソーシャルディスタンスを保つことが困難であると同時に、通常屋内で行われることから出席者間で瞬く間に感染が広がってしまう可能性が高い。

 もちろん太平洋諸島出身者だけがハワイの感染者増加原因ではなく、ロックダウン疲れからくる気の緩みや大人数のパーティー、屋内レストランでの会食、職場、自主隔離を守らない観光客など、ほかにも様々な原因があるはずだ。同紙によると、8月6日の例では、感染者144人のうち、71人は葬儀数件、6人はホットヨガのクラス、12人は誕生日パーティーにおけるクラスター感染だという。


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