母親の言葉
では、ハリス上院議員は副大統領候補指名受諾演説で何を語るでしょうか。ハリス氏は西部カリフォルニア州の司法長官であった時代に、東部デラウェア州の司法長官のボー氏と一緒に仕事をした思い出を、ストーリーに仕立てて語るかもしれません。
さらに、ハリス上院議員は指名受諾演説の中でインド系の母親の言葉を紹介するでしょう。ガンの研究者であり、公民権運動の活動家であった母親の影響を、ハリス氏は強く受けました。
ハリス氏によれば、母親は「不平不満を言うな。何かをやれ」と語っていました。「何かをやれ(Do something)」がハリス氏のいわゆる「座右の銘」です。ハリス氏の母親は言葉よりも行動の重要性を教えたのです。
「不平不満を言うな。何かをやれ」は、新型コロナウイルスの対応においてリーダーとして行動を起こさないトランプ氏に対する批判のメッセージになります。トランプ氏は感染拡大を中国の責任にして、不平不満ばかり述べているからです。
「何かをやれ」は、トランプ氏に対してかなり強力なメッセージになるでしょう。
遠隔全国党大会のアドバンテージ
バイデン氏とハリス氏が8月11日、デラウェア州の高校の体育館に揃って現れたとき、両氏はマスクを着用していました。しかも両氏の演説後、バイデン・ハリス両夫妻は約5メートルの間隔をあけて立ちました。もちろん体育館には支持者はいません。本来でしたら、多くの支持者の声援の中で、正副大統領候補と家族がハグをします。
トランプ大統領とは異なり、バイデン・ハリス両氏は正しいコロナ対応をしながら、選挙運動を行っているというメッセージを有権者に送りました。同時に、トランプ氏がコロナ対応に失敗したので、異例の選挙運動になっているという印象も与えました。
民主党は今回の全国党大会においても同様のメッセージを発信しています。まず、コロナ禍に対応した遠隔党大会を開催しているというメッセージを送っています。加えて、トランプ大統領がコロナ感染拡大を制御できないので、遠隔の党大会になったというメッセージも送っているのです。遠隔党大会は民主党にアドバンテージを与えました。
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