一部のマスコミや専門家は、中国が欧州支援に乗り出した理由を、欧州を支援する見返りとして、ヨーロッパ諸国に「対中武器輸出禁止措置の見直し」と「中国に対する市場経済国の承認」を求めるため、と分析している。
この2つは確かに中国が常にEU諸国に対して求めていることで、中国の欧州支援にはこのような「下心」があると言えよう。しかしそれだけでは、中国がどうして今年の6月になって欧州支援に乗り出したかについての説明にはならないのだ。というのも、中国が上述の2つのことを欧州に求めてきたのは、随分前からのことであって決して今に始まったことではないからだ。
中国の経済状況を見ると…
それでは中国は一体なぜ、今年の6月から本気で「白馬の王子様」になろうとしているのだろうか。
この問題を解く手がかりは実は、同じく今年の6月に中国の国内外から伝わった、経済状況に関する一連のニュースにあるのではないかと思う。
まずは6月21日、英系金融機関のHSBCが中国の6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)を発表したが、それは前月比0.3ポイント低い48.1だった。景気の良し悪しの分かれ目となる同指数が50を下回るのは8カ月連続で、指数としては昨年11月以来の低い水準となったという。
そして29日、今度は国家統計局の発表によって、今年の1月から5月まで、全国一定規模以上の工業企業の利益は前年比2.4%減で、4カ月連続のマイナス成長となったことが判明したのである。
電力消費量も大幅に低減
産業の景況悪化は別の情報によっても裏付けられる。電力消費量の大幅な低減だ。国家統計局が発表した今年4月の全国の発電量は前年比0.7%増ではあるが、それは1月の9.7%増からは大幅に落ちた数字である。英ヘラルド・トリビューン紙は6月25日付の紙面でも、基幹産業が集中する有数の工業ベルト地帯である江蘇省と山東省の電力消費量が前年比10%以上も激減したと報じている。李克強氏はかつて、中国の経済動向を見るのに電力消費量の変化が最重要な指標であると語ったことがあるから、彼の見方からすれば、中国経済が失速していることは確実である。
電力消費の低減と関連して、石炭が売れなくなるというような事態も起きている。