2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年7月11日

 中国商務省・沈丹陽報道官が「中国最大の貿易相手国であるヨーロッパの経済回復が遅れていて、ヨーロッパ向けの輸出が減少し、全体の輸出にも影響が出ている」と発言したのは6月25日のことである。その直前における中国商務省の発表によると、今年1月から5月までの中国のヨーロッパへの輸出は、去年の同じ時期に比べて0.8%も減少したという。そしてそれこそが、中国の対外輸出の伸び悩みを作った主因の一つなのである。

 こうして見ると、中国はどうして今年の6月になって欧州支援に本腰を入れ始めたのか、理由がはっきりと見えてくるであろう。EU経済圏は今、アメリカ、日本を超えて中国にとって最大の輸出先となっている。そして、対外輸出こそが中国に欠かせない成長の牽引力の一つであることは前述の通りだ。とういうことは要するに、中国は欧州を救うか救わないか云々という以前に、そもそも欧州こそ中国の最大のお得意様であり、中国の経済成長にとっての頼みの綱なのである。

 つまり「白馬の王子様」はむしろ、「お姫様」を頼りにして生きているわけだ。だからこそ、中国の対欧州輸出が減少し、対外輸出全体が伸び悩み、自国の経済の失速につながってくると、政府は6月に入ってから一転して欧州を救おうと動き出したわけである。

 考えてみればなんのことはない。中国は自分自身を救うために欧州支援に乗り出しただけの話である。そしてこの一件からも、中国経済は見かけによらず実に脆弱なものであることがよく分かるだろう。世界経済が中国に依存している以上に、中国経済は世界に依存しているのだ。そういう意味では、中国経済だけに多大な期待を寄せて、それが世界経済の牽引力となればと熱望するのは、そもそもナンセンスではないだろうか。

 
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