中国最大の石炭備蓄基地である秦皇島港では今、約950万トンの石炭が積み上がり、引き取り手のいない在庫となっている。08年の世界同時不況で中国経済が危機的状況にあった時、秦皇島港の石炭在庫が930万トンに達したことがあるが、今、このワースト記録は見事に破られたわけである。そして秦皇島港を含めて、石炭備蓄基地となる「環渤海四大港湾」での石炭在庫は6月24日現在では2014万トンという歴史最高水準に達しているから、石炭市場の冷え込みはかなり深刻である。
これは要するに、製造業が不況に陥ることで電力の消費量が大幅に減少し、発電に必要な石炭の需要も急速に冷え込んだ、という経済衰退の典型的な構図である。石炭需要の低減を報じた第一財経日報という経済紙の記事が、「マクロ経済の顕著な失速が原因だ」と断じたのはまさに的を射た卓識であろう。
「2台の馬車」の失速
問題は、かつては飛ぶ鳥を落とすほどの勢いだった中国の高度成長がどうしてここに来て「顕著な失速」を見せているのか、である。これに関しては、次のような説明が妥当であろうと思う。要するに、今までの十数年間、中国はずっと対外輸出の拡大と国内固定資産投資の拡大という「2台の馬車」で高度成長を引っ張ってきた。しかし、このような成長戦略は今になって自らの限界にぶつかり、経済の失速をもたらした、ということなのである。
たとえば国内の固定資産投資の拡大を見ても、2010年までは、おおよそ25%から30%という高い伸び率を維持してきた。しかし、今年になると、1月から5月までの固定資産投資の伸び率はとうとう20%を切り19.7%程度となった。つまり、不動産バブルが崩壊しかけている状況にしたがって、固定資産投資の伸びは急速に落ちてしまい、経済失速の一因を作った、というわけである。
中国経済を引っ張ってきたもう1台の馬車はすなわち対外輸出の拡大である。1990年代末からの十数年間、年に25%以上の伸び率で拡大してきた。そして今、「2台の馬車」の1台である「投資の拡大」が失速した中で、輸出の拡大こそが成長維持の命綱として期待されているのだが、実は今年に入ってから、この分野での成長もまた伸び悩みの深刻な状況となっているのである。
例年では25%以上の驚異的な伸び率で拡大してきた対外輸出は、今年1月から5月までの伸び率ではたったの8.7%増にとどまり、急成長はもはや過去のものとなりつつあることは明らかである。つまり中国経済はここに来て、成長の牽引力としての「2台の馬車」が一斉に失速してしまうという、まさに絶体絶命の危機に立たされているのである。
ヨーロッパは中国最大の貿易相手国
そして、中国の対外輸出の失速をもたらした大きな原因の1つは、まさに欧州債務危機から発したところの、EU全体の経済不振なのである。