2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年9月3日

バイデンの「期待値の低さ」と「争点潰し」

 討論会におけるバイデン氏の強みは、期待値の低さです。例えば、仮にバイデン氏のパフォーマンスが60点であっても、視聴者は80点と解釈するかもしれません。

 逆に、トランプ大統領に対する期待値は高く、当然同大統領が討論会に勝つと思い込んでいる有権者は多いでしょう。となると、トランプ氏のパフォーマンスが70点であったら、過度に期待していた視聴者は50点ぐらいの出来に見えるかもしれまえん。期待値の差はバイデン氏に有利に働きます。

 次に、バイデン氏は討論会で「争点潰し」に出る公算が高いです。それはどのような意味でしょうか。対中政策を取り上げて説明しましょう。

 バイデン氏は「バイアメリカン法」を活用して連邦政府が米国製の製品を買い取り、製造業を復活させて、500万人の雇用を創出すると主張します。「メイド・イン・チャイナ」ではなく、「メイド・イン・USA」を増やすという戦略に訴えます。そうすることで、バイデン氏は中国への依存度を減らすと言うのです。

 このバイデン氏の経済政策は、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の異なったバージョンです。バイデン氏はトランプ大統領と類似したポジションをとって、同大統領のアドバンテージを消そうとしているのです。つまり、「相手の争点を潰す」戦略に出ました。

 トランプ大統領は自分が米国史上最も中国に厳しい大統領であると豪語しました。同様に、バイデン氏も「中国に自由にやらせない」と発言しました。これも「争点潰し」といえます。

 「争点潰し」は現職大統領を破る選挙戦略です。1992年米大統領選挙においてビル・クリントンアーカンソー州知事(以下当時)が現職のジョージ・H・W・ブッシュ大統領を破ったときに用いた戦略です。共和党は自由貿易主義で犯罪に強く、逆に民主党は保護貿易主義で犯罪に弱いと見られていました。そこでクリントン氏は自由貿易主義を主張し、犯罪に厳しい政策を打ち出しました。そうすることで、ブッシュ氏の争点を潰し、再選を阻止したのです。


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