ハリスの「オフェンス」と「ディフェンス」
次に副大統領候補の討論会の見どころについても説明しましょう。バイデン氏とは異なり、ハリス上院議員に対する期待値は高いといえます。
今回の民主・共和両党の全国党大会において、ハリス氏とマイク・ペンス副大統領はそれぞれの党大会の3日目に指名受諾演説を行いました。そこで、3日目の視聴者数を比べてみると、民主党が共和党よりも約550万人も上回りました。明らかに「ハリス・ファクター(要因)」の影響です。
期待値に加え、注目度においてもハリス氏はペンス氏をリードしています。ただ、裏返せば期待値と注目度が高いために、ハリス氏は最高のパフォーマンスを見せなければなりません。そのプレッシャーがハリス氏にはあるでしょう。
ハリス氏には「オフェンス」が強く、「ディフェンス」が弱いという特徴があります。昨年6月に開催された1回目の民主党大統領候補指争いにおけるテレビ討論会では、ハリス氏は本命のバイデン氏を人種問題でやり込めました。
しかし、ハリス氏はディフェンスに回ると弱さをみせます。例えば、国民皆保険に関して立場を変えた点を突かれると、説得のあるディフェンスができません。
討論会でハリス氏は間違いなく、ホワイトハウスのコロナ対策チームの責任者であったペンス氏を激しく攻撃します。特に、オバマ政権時代の15年に米国家安全保障会議(NSC)の中に設置したグローバルな公衆衛生の安全保障問題を扱うチームを、トランプ大統領が解散させた点を追及する可能性は極めて高いです。このチームは中国及びアフリカにおける感染病を監視していました。
ハリス氏は「今、米国はその代償を払っている」と議論して、トランプ大統領がコロナ対策に失敗した原因に焦点を当てます。従って、コロナ対策の討論ではハリス氏がペンス氏に勝利する公算は高いです。
ところが問題は、テーマが外交・安全保障に移ったときです。ハリス氏は外交・安全保障の経験がほぼセロです。ペンス氏の攻撃をディフェンスできるのか鍵になります。仮に、ハリス氏は効果的な議論ができないと、有権者は大統領としての資質に欠けると判断します。次世代リーダーのハリス氏にとって、乗り越えなければならない山になります。