2024年4月14日(日)

WEDGE REPORT

2020年10月5日

  SAKURA HIRAI

土居 「行政の無謬性」を払拭すれば、日本の行政、特に官僚組織はウィズコロナのなかで、緩やかな対応をしていくことは可能ですし、彼らには対応能力があると思います。官僚たちも「我々は過ちを犯しません」という鎧・兜をいつまでも身に着けている時代ではないということに気づき始めているのではないでしょうか。

 今回の新型コロナ対応でその能力が発揮されれば、今後の日本の政策決定能力が向上し、新たな道を拓くことにつながるかもしれません。

── 今回、日本は欧米に比べて死者数が少ないのに経済的ダメージが極めて大きくなっています。

土居 リーマン・ショックによる金融危機と今回のコロナ危機を重ねてみると同じことが言えます。金融危機が起きた欧米と起きなかった日本─。死者数が多い欧米と少ない日本─。この側面だけ捉えれば日本のほうが良かったということになりますが、リーマン・ショック後、日本経済は輸出の急減や産業空洞化の加速などにより、長期にわたり低迷しました。

 だから、もしリーマン・ショックに教訓を得るならば、この経済的打撃の後、財政依存から脱却しなければならないということです。長期的に見て、リーマン・ショック後の景気対策が日本経済を立ち直らせたかというと、そうではなかった、というのが私の総括です。むしろ、財政依存を高めた産業分野はそれに甘んじ、自律する方向に進まず、日本経済の長期低迷の遠因にもなったと思います。

 今回も同じことを繰り返してはなりません。財政依存は日本の産業のためにも、日本経済のためにもなりません。個人も企業も財政支出に依存しないで生きていくのが当たり前という認識に立つべきでしょう。

齊藤 日本と欧米との違いは、まさにその点にあります。コロナ前から抱えていた日本の財政危機の度合いは極めて深刻でしたからね。

── 今回の危機を乗り越えるためにも、今こそ、日本は一つになる必要がありますね。

齊藤 ウィズコロナをスキップしてポストコロナには移れません。ポストコロナはウィズコロナの社会の〝結果〟なのです。だからこそ、この期間、国民全体で苦労を分かち合いながらも有意義に試行錯誤し、より多くの選択肢を見いだすことこそが、「ポストコロナの豊かな社会をつくっていく土台」になると思います。

土居 コロナ対策で手洗い・うがいの習慣が定着すれば、これまで我々がかかっていた風邪やインフルエンザといった感染を抑える効果があるかもしれません。世界的にみても、新型コロナの感染防止対策によって衛生環境が改善した途上国では、将来病気にかかる人が減少するでしょう。それはまさにウィズコロナ時代の試行錯誤による成果になると思います。

齊藤 一人一人がかなり我慢しながら個人の利益と公共の利益を両立させていく日本の風土には、確かに功罪両面があります。しかし、今は、その「良さ」を発揮すべきときでしょう。

土居 コロナ禍におけるマスク文化の定着も日本では世界に先駆けて早かった。いわゆる「空気を読む」というか、国民全体でコンセンサスを形成するスピードの速さが良い方向に働けばよいですね。感染症対策は我流でやればいいものではありません。現時点で分かっている情報に合わせて、今何に気をつけて、何を緩めていいのか、といったことを社会の共通認識として情報共有しながら行動していく。それこそが、我々が選択すべき未来だと思います。(聞き手・編集部 川﨑隆司) 

Wedge10月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
新型コロナ  こうすれば共存できる
Part 1  ・新型コロナは〝ただの風邪〟ではない でも、恐れすぎる必要もない
           ・正しく学んで正しく恐れよう! 新型コロナ情報を読むレッスン
           ・医療現場のコロナ対応は改善傾向 それでも残る多くの〝負担〟
Part 2  ・「してはいけない」はもうやめよう 今こそ連帯促す発信を
           ・コロナショック克服へ 経済活動再開に向けた3つのステップとは
           ・なぜ食い違う? 政府と首長の主張
           ・動き始めた事業者たち 社会に「価値」をもたらす科学の使い方   
Part 3    煽る報道、翻弄される国民 科学報道先進国・英国に学べ  
Part 4    タガが外れた10万円給付 財政依存から脱却し、試行錯誤を許容する社会へ    
Part 5    国内の「分断」を防ぎ日本は進化のための〝脱皮〟を

  
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◆Wedge2020年10月号より

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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