2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2012年7月24日

日精協の抵抗

 認知症PTと同時期に開かれた厚労省の有識者検討会では、精神科特例の廃止と、医療保護入院改革が議論された。両案とも病床と入院患者の減少につながる。日精協推薦の委員は抵抗を続けた。

 「病床が多いのは国の責任だ。68年にWHOからクラーク勧告を受けたのに無視した。我々はアウトリーチ(訪問型医療)に消極的なのではない。しかし、現実論として、病床削減するなら受け皿の整備が先だ。そうしないと入院患者がホームレスになりかねない」(山崎会長)。

 日精協は、長期高齢の在院者の「受け皿」として、精神科病床を介護老人保健施設に転換できるようにすべきと提案している。「老健への転換は看板の架け替えに過ぎない」と反対論が相次いだが、担当の精神・障害保健課が作成したとりまとめには反映されなかった。日精協委員が「老健に否定的な老健局をまきこんで、確実な実施に向かわせるよう明記すべき」とまで主張したのには驚かされる。認知症の人や精神障害者の長期にわたる施設収容が維持される介護型精神老健の創設は不適切だ。

 精神障害者の人権問題に詳しい八尋光秀弁護士はこう語る。

 「現状を追認した現実論から入れば改革はできない。世界中でやったことなのだから、2年なら2年で病床を削減すると決めた上で、具体的に地域で生活していく場をどう作るかデザインしていくべきだ。薬物依存の人を社会復帰させるダルク(薬物依存リハビリセンター)という取り組みに関わっているが、その経験によれば入院より地域生活の方がコストも安い。自分がどう余生を暮らしたいか考えたときに、精神科病院への入院がいいという人はいないだろう。社会で支えようという覚悟を国民が共有することが大切だ」

◆WEDGE2012年8月号より

 

 

 

 

 

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