2024年12月23日(月)

ちょっと寄り道うまいもの

2012年8月10日

 涼やかな風が心地よい。木漏れ日に煌(きら)めく水が、緑が美しい。そこにいるだけで、日常がリセットされたような清々しさに、また、来て良かったと思う。

 首都圏からのお気に入りの小さな旅の目的地が、伊豆のワサビ田である。特に暑さを感じるようになると。これほど、完璧な天然のクーラーを知らない。ワサビ田は川の流れに沿って作られているし、自然の緑も豊かだ。修善寺駅あたりよりも温度が何度か低いのだとか。

 加えて、ワサビが暑さに音を上げないよう(適切な温度に保てるよう)、木陰を作るために木を植えてある。その加減がまことに具合よいのだ。ぼうっとしているだけで。

 ワサビ田が広がるすぐそばに、萬城(ばんじょう)の滝もある。ここがさらに豪快に涼しいし、キャンプ場やお弁当を広げたりする場所もある。修善寺の駅あたりで売っている、名物の弁当「あじ寿司」<酢でしめた地物の鯵(あじ)に、たっぷりと本物のワサビ>でも、広げるのが楽しい。

 涼を満喫したら、買い物だ。ここを訪ねるのは、涼むためだけではない。美味しいものを仕入れるためでもある。買い求めるのは、もちろん、ワサビ。真妻(まづま)という最高の品種。辛み、刺激の中に好ましい甘みがある。ふつうではあまり手に入らない、ワサビの茎や葉も買い込む。葉っぱは刻んで桜エビなどとかき揚げに。茎はワサビ漬けや三杯酢に漬け込んだり。

 私が分けてもらうのは、旧知の飯田哲司さんのところ。看板も何もないワサビ農家だが、農学部で博士号までとって、ワサビ農家九代目(!)を継いでいる。ワサビについてのさまざまなことを教えてもらう。紹介してくれた、近所の「ヤマゴわさび店」、小倉さんのところで売っているワサビ漬けが凄い。自分で作っても、これほどに豪快には出来ない。圧倒的なワサビ漬け。やはり地物のシイタケを合わせたものも絶品。完璧な酒肴。


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