2024年6月18日(火)

WEDGE REPORT

2020年10月28日

日本の「成果」
四つのメガ協定に注目を

 第一はTPPである。17年に米国が離脱した後も日本は残りの10カ国をまとめてCPTPP(包括的かつ先進的環太平洋経済パートナーシップ)、いわゆるTPP11を発効させた。マレーシアやベトナムは米国の抜けたTPPには魅力を感じていなかった。しかし、日本が粘り強くその意義を説得し、一国も落伍することなく18年12月に発効した。世界貿易の約14%をカバーし、東アジアから大洋州、さらにラテン・アメリカの国々を擁する地域間メガFTA(自由貿易協定)ができた意味は大きい。

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 二つ目は日EU・EPA(経済連携協定)だ。日本とEUを合わせると世界の国内総生産(GDP)の約3割、世界貿易の約38%をカバーするメガFTAである。最大の貿易地域であるEUとGDP世界第三位の日本が手を携えて自由貿易の方向に進んだことはWTO体制の維持強化の観点からもその意義は極めて大きい。

 三つ目は今年1月に発効した日米物品貿易協定(USJTA)である。日本にとっての最大の意義は日本製自動車に対する高関税の賦課を回避できたことにある。また16年までのTPP交渉における日米の市場アクセス交渉の範囲内で農産品をめぐる問題を処理できたことは日本の対米交渉戦術が優れていたことを物語る。

 四つ目は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)である。もともと中国が04年に「ASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3」からなる東アジア自由貿易地域(EAFTA)を提唱したのに対抗して、日本が豪州、ニュージーランド、インドを加えた「ASEANプラス6」を提案、ASEANがこれを受け入れて、RCEPとして13年から交渉が開始された。

 日本がインドを誘ったのは中国とのバランスをとるためであったが、昨年11月、インドがRCEP交渉からの離脱を表明するなど大筋合意の一歩手前で停滞している。興味深いのはこのRCEPの中にTPP11のメンバー国が、豪州、マレーシア、日本など7カ国入っている点である。ASEAN諸国の中にはタイやフィリピンのようにTPP11への参加を希望している国もあり、TPP諸国がRCEPの中で「クリティカル・マス」を形成し、RCEPの「貿易自由化の質」を引き上げていくことが十分考えられる。

 近年、これらの交渉を主導してきた日本の交渉力は国際的にも高く評価されており、特に日本がTPP合意をベースに知的財産権の保護、国営企業に対する規律の強化、政府調達の透明性向上などの分野でさらに指導力を発揮することが期待されている。

「封じ込め」ではなく
中国をどう取り込むか

 TPP交渉が盛り上がっていた頃、当初はTPPを新たな「中国囲い込み」の手段にしようとする意見もあった。しかし15年頃からはそうした主張は徐々に影を潜め、むしろTPPの枠の中に受け入れて先進的なルールを中国にも馴染ませようとする考え方が顕著になってきた。筆者が注目したのは当時来日した米国務省のブリンケン国務副長官が東京での講演で明確に「TPPは新たな対中国封じ込めではない」と発言し、中国の交渉参加を頭から否定しなかったことである。

 当時の中国にもFTA政策のアーキテクトと目されていた張藴岭中国社会科学院永久会員のように「RCEPとTPPは相互補完的」と柔軟な見方をする専門家がおり、「TPP参加は中国にとって『第二のWTO加盟』である」と筆者に述べる識者もいた。中国内でもTPPという「外圧」を使い旧態依然たる国営企業の合理化・近代化を急ぐべきとする意見があったのである。


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