逃げ出す共和党議員
民主党の杞憂とは逆に与党共和党では「大統領の再選が難しい」として、トランプ氏を見限り、距離を置き始める連邦議員が増え始めている。トランプ氏との共倒れを回避する動きだ。中西部ネブラスカ州選出のサス上院議員は最近の地元での対話集会で、大統領のコロナ禍対応を批判し、人種問題についても「白人至上主義者と戯れている」と非難した。
同州は保守地盤でサス氏の当選は確実視されているが、選挙後を見据えてか、トランプ氏への追随を否定して見せた。上院のマコネル院内総務も二転三転する大統領のコロナ経済支援策を拒否し、トランプ氏の威信低下が浮き彫りになった。大統領の盟友のグラム上院議員は民主党の政権奪還の可能性に言及、再選が危ぶまれるマクサリー上院議員は「大統領を支持してきたことを誇りに思うか」との質問に明言せず、波紋を広げた。
こうした身内の“トランプ離れ”や、15日にバイデン氏と同じ時間に別々に出演した対話集会のテレビ視聴者数が同氏を下回ったことにショックを受けた反動からか、大統領の遊説は過激化する一方だ。中でも暴力を扇動するものと批判が起きているのが17日のミシガン州マスキーゴンの集会だ。
数千人の支持者から、厳しいコロナウイルス対策を推進する同州のウィットマー知事(民主党)を「投獄しろ」と大合唱が起きた際、大統領は止めるどころか「全員を投獄しろ」と応じた。「全員」とはオバマ前大統領や、クリントン氏、バイデン氏らと受け止められており、大統領選前後に懸念されている暴力を扇動するような発言に強い批判が集まっている。
「投獄しろ」は前回の大統領選で、クリントン氏を攻撃する際に使ったスローガンだ。大統領はバー司法長官やレイ連邦捜査局(FBI)長官らに対し、オバマ氏やクリントン氏、バイデン氏を自分の選挙運動をスパイした容疑などで起訴するよう指示する発言を公然と行っている。
トランプ大統領は激戦州のフロリダやペンシルベニア、ノースカロライナを精力的に遊説する計画で、19日も南部アリゾナ州に入る予定。米紙によると、大統領は遊説時の集会に多くの支持者を動員することが「強さの証明」と確信しており、バイデン氏との最後の直接対決の場になる22日のディベート(テレビ討論)に向け、遊説が今後、一段と攻撃的な熱を帯びるのは確実だ。
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