WEDGE REPORT

2020年10月20日

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 米大統領選が2週間余りに迫る中、支持率で大きくリードする民主党のバイデン陣営が楽勝感の引き締めに躍起になっている。選挙前に同じように優勢でありながら土壇場で大逆転された前回のヒラリー・クリントン氏の悪夢再来のデジャブに脅えているためだ。

19日、アリゾナで集会を行ったトランプ大統領。コロナからの復帰をアピールするマクナニー報道官(AP/AFLO)

クリントン敗北前の状況に酷似

 バイデン陣営がデジャブに脅えているのは終盤の選挙情勢が2016年の4年前の状況に酷似してきたことがある。当時は11月8日の投票まで3週間の段階で、クリントン氏が全米平均でトランプ氏を7~8ポイントリード。勝敗の行方を左右する激戦州の中西部ミシガンでは12ポイント、東部ペンシルベニアと中西部ウィスコンシでは7ポイント、それぞれトランプ氏を凌駕していた。

 しかしその後、選挙までの最終局面で有権者の一部が心変わりし、またこの段階で態度を未決定だった人たちがトランプ支持に傾斜、結果としてクリントン氏のリードは雲散霧消。トランプ氏はこれら3州に加え、南部のアリゾナ、ノースカロライナ、フロリダの6激戦州すべてで勝利した。

 注目に値するのはミシガン、ペンシルべニア、ウィスコンシの3州におけるトランプ、クリントン両氏の得票差がたった7万7744票(有効票数約1億3667万票)だった点だろう。ミシガンではわずか1万704票(0.3%)の僅差。ペンシルベニアでは4万4292票差(0.7%)、ウィスコンシでも2万2748票差(0.7%)で、トランプ氏がギリギリでクリントン氏をとらえたことが分かる。

 同時期の現在の選挙情勢はどうか。世論調査のまとめに定評のある「リアル・クリア・ポリティクス」(10月18日)によると、全米平均の支持率でバイデン氏が9ポイント前後リードし、ミシガン州で7.2ポイント、ペンシルベニア州で6.5ポイント、ウィスコンシ州で6.3ポイント上回っている。アリゾナ、ノースカロライナ、フロリダ各州でもバイデン氏が2~3ポイント優勢だ。

 米紙ワシントン・ポストの調査では、バイデン氏が全米平均で11ポイント、ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシ各州で7~8ポイントリードしている。いずれの調査でもトランプ氏の劣勢は歴然だ。しかし、ここ数日間で両氏の差がペンシルベニアで4.4ポイント、フロリダで1.2ポイントまで縮小しており、バイデン陣営の悪夢再来のデジャブへの懸念は高まっている。

“恐怖のシナリオ”

 米紙ワシントン・ポストが民主党の政治活動委員会の予想として伝えるところによると、民主党にとっての“恐怖のシナリオ”は以下のようなものだ。11月3日の本番投票で、白人労働者のバイデン候補への投票率が事前の世論調査よりも3ポイント低く、また非白人層の投票率が予想と比較して4ポイント低かった場合、10月9日時点の支持率を基に計算すると、大統領選挙人の獲得数はバイデン氏257人、トランプ氏239人の接戦になる。

 いずれも勝利に必要な過半数の270人には届かず、勝敗の行方は開票が完了していない西部ネバダ(選挙人6)、ミシガン(同16)、ペンシルベニア(同20)という3州の帰すうにかかることになるという。勝負がここまでもつれれば、トランプ氏にとっても勝機の可能性が見えてくる。バイデン氏にはまさに見たくない展開だろう。

 バイデン陣営のディロン選対本部長は「世論調査のリードは長くは続かない。全米レベルの優位は実際の選挙人の獲得にはほとんど関係ない。最善の世論調査にも(前回のように)間違いがあることを学んでいる」と述べ、陣営の緩みの引き締めに躍起だ。ただ、バイデン氏にはクリントン氏になかった強みがあるのも事実。

 第1にバイデン氏に対する有権者の嫌悪度が小さい点だ。トランプ氏とクリントン氏への嫌悪度は同程度あったが、バイデン氏はクリントン氏ほど嫌われていないということだ。第2に、態度を決定していない有権者が前回に比べ半分ほどに減っていることもバイデン氏には有利だろう。それだけ世論調査と投票のブレが小さくなるからだ。同紙の世論調査によると、トランプ支持者の90%、バイデン支持者の88%がすでに態度を決めているという。

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