2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2020年10月10日

 新型コロナウイルスに感染しているトランプ米大統領は10月8日、保守系テレビの深夜番組で、自身へのロシア関連疑惑を捏造したとしてオバマ前大統領やバイデン前副大統領らを訴追するよう要求、訴追に動かないバー司法長官やポンペオ国務長官らをやり玉に挙げた。2人は最も忠実な側近だ。入院先から強行退院したものの支持率が低迷、焦りのあまり八つ当たりした格好だ。

(John Willman/getttyimages)

国務長官には「満足していない」

 トランプ大統領は2日にワシントン郊外の軍医療センターに入院し、わずか3日間で退院を強行、7日にはオーバルオフィス(大統領執務室)での執務を開始した。ホワイトハウスの主治医、コンリー海軍少佐は大統領の「病状が安定し、感染の症状が見られない」とし、感染から10日目となる10日から通常の活動に復帰可能と発表した。

 しかし、PCR検査などで大統領が陽性から陰性に転じたのかは明らかにしていない。米疾病予防センター(CDC)のガイドラインによると、陽性が判明した場合は、最低10日間は隔離することを求めている。大統領は「ウイルスに感染しているとは思わない」と述べているが、陰性が確認されない中での執務再開は側近らに感染を拡大させかねないリスクをはらんでいる。ホワイトハウス自体が一大クラスターと化しており、これまでに大統領夫妻ら30数人の感染が伝えられている。

 大統領が復帰を急ぐのは11月3日の選挙が迫る中で、対立候補であるバイデン氏との支持率の差が拡大、日増しに劣勢の度合いが強まっているためだ。起死回生を狙った先月29日のテレビ討論はバイデン氏の発言を妨害し続けるなどして失敗に終わり、その直後に発症、入院したことから、同氏への後れは一段と広がった。

 世論調査に定評のある「リアル・クリア・ポリティックス」によると、討論前は6ポイント~7ポイントだった平均支持率の差は8日現在、9.7ポイントまでに拡大し、さらに広がる傾向を見せている。全国レベルだけではなく、勝敗に決定的な影響を与える激戦州でも後れが目立ってきている。ニューヨーク・タイムズの調査(10月7日)によると、南部フロリダ州で11ポイント、東部ペンシルベニア州で13ポイントの差が付いた。こうした両州の状況が変わらなければ、トランプ氏の当選は絶望的となるだろう。

 情勢が一段と不利になる中で、追い詰められた大統領の苛立ちは募る一方。米メディアによると、8日深夜のフォックス・ビジネスとの電話インタビューで大統領は愚痴ともつかないとりとめのない話を長々としゃべり、前回の選挙の時、オバマ前大統領やバイデン氏、対立候補だったヒラリー・クリントン氏がトランプ氏を貶めようと“史上最大の政治犯罪”ロシア疑惑を捏造したと非難、彼らは訴追されるべきだと要求した。

 驚いたことに最も忠実な側近であるポンペオ国務長官にもその矛先は向かい、「(クリントン氏の不正を証明する)文書が国務省内にあるのにかかわらず、出そうとしていない。彼には満足していない」などと批判。バー司法長官に対しては「(起訴に踏み切って)史上最も偉大な司法長官として名をとどめるか、極めて哀れな長官となるかだ」と不満を露わにした。連邦捜査局(FBI)のレイ長官には「(捜査に乗り出さないことに)失望している」と批判。同紙は「大統領は(オクトーバー・サプライズ)ならず“オクトーバー訴追”が支持回復の決め手と思っているようだ」と指摘した。


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