2024年11月24日(日)

使えない上司・使えない部下

2020年10月30日

本当に使えない社員はいない

 14年間、多くの会社から労務相談を受けてきました。採用前から退職後に至るまでの疑問やトラブルをお聞きしています。その中で、社員を「使える、使えない」と露骨に表現する方は少ないのですが、いわゆる能力不足の社員への対応に苦慮している場面はあるようです。

 お話を伺う限り、「使えない」と評価される社員のタイプには、複数の要因が起きているように思います。例えば、自ら進んで仕事ができない。一方で、誰にも聞かないで仕事を進める。同時に一つのことしか進められない。言われたことしかできない。そして、できない言い訳をしたり、嘘をついたり、最後は病気になってしまったり…。結果として、パフォーマンスが上がらなくなり、能力不足と判断される。

 こうして問題を複合的に抱え込む社員の扱いに会社が困り果てて「辞めさせたい」といった相談をしてくる場合があります。私も経営者のはしくれですからその思いはわからないでもないのですが、「解雇はできるだけ避け、話し合いで解決したほうがいい」とアドバイスしています。

 現行の労働法では、雇用した人を解雇するのは大変難しいのです。例えば、問題行為がしっかりと記録に残されており、それに対して注意指導や懲戒処分を繰り返したことが文書として残っている。その後も改善が一向に見られないことが明らか。少なくともこうした証拠があって、かつそれらが法的な争いになっても有効であるという確証がなければ、法廷で争うことになりえます。このあたりを会社として最初からしっかりやるべきなのです。「辞めさせたい」からといって、すぐに解雇ができるといった話ではないのです。

 「使える、使えない」でいえば、実は、本当に使えない社員はいないのではないか、と思います。「使えない」と嘆くより、「どのようにしたら、その人の持ち味を引き出すことができるのか」を先に考えたほうがいいですよね。「できない」と決めつけるのではなく、できることを極力探す。それでチームや会社の生産性を上げていくしかない。それが、上司の役割ではないでしょうか。「使えない人」は、たぶんいないんですよ、よほどのことがない限り…。ただ、「この人のスキルは、この仕事には向いていないな~」ということは、正直あると思います。仕事で自分の居場所を探すのって難しいですね。

 最近は、若い頃のように厳しく言うことが減りました。時と場合によっては、叱る自分が悪いのかな? と思うようにもなりました。あまり我慢するとストレスになりますが、だんだんとアンガーマネジメント(怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニング)を覚えていきました。例えば、知り合いに教えていただいたのですが、「その場を一旦離れる」ことです。物理的に距離を置くのは、大事だと思います。精神的にも落ち着くことができます。叱る前に、一旦離れて冷静になることが必要だと思っています。一方で、コロナ禍で在宅勤務が増えてきていますから、距離を置いたことによるコミュニケーション不足には注意が必要ですね。

 私は、社会保険労務士としては少し変わっているかもしれません。それでも、考えや生き方などに共感してくださっている方も少なからずいます。だからこそ、私の今があり、過去の「苦の娑婆」の20年も笑って語れます。これからもコツコツと地味にがんばります。

アキ・オフィス

  
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