2024年4月26日(金)

シルバー民主主義に泣く若者

2012年8月23日

 敢えて過激な表現を使うことをお赦しいただくと、こうした雇用調整助成金の対象者は「社内失業者」の立場に置かれているのであり、社内失業者を維持するために、企業及び政府、つまり国民の税金を投入するのは、マクロ経済的には資源の非効率性を助長することとなろう。

 また、社内失業者の規模は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計によると、平成21年度時点では、約150万人程度とされている(もっとも、同機構の推計では、この150万人は雇用調整助成金により雇用が維持された成果であるとされている点に留意願いたい)。

 こうした補助金政策により下支えされた企業による雇用保蔵(最適な雇用者数と実際の常用雇用者数との差)の問題点は、(1)企業の事業再構築意欲を喪失させ、問題を先送りさせるインセンティブを与えてしまう、(2)マクロ経済的には資源移動を阻害することで成長率の低下を招く、ことにある。

 この結果、雇用保蔵が無ければ、景気回復後元のイスには新しい参加者が座れた可能性や、新しいイスの創出にも失敗することとなる。

イスの減少をもたらす日本型雇用慣行

 次に、わが国の雇用慣行の特徴、いわゆる日本型雇用慣行としては、年功序列型賃金と長期雇用(終身雇用)とが挙げられる。こうした雇用慣行は、企業の業績悪化により、新規参入者のためのイスの数の減少をもたらす。

 つまり、企業のコストの大部分を人件費が占め、業績悪化とともに、人件費の削減が行われる。このとき、既存の雇用が維持される傾向が強ければ、当然新規参入者、つまり若い世代の雇用が削られる運命にあるのは自明の理だろう。長期雇用を前提とした企業の雇用慣行の広がりは、こうした既存の雇用を優先的に維持するインセンティブを強めることとなる。

 さらに、既存の雇用維持は年功序列型賃金と相まって、いっそうの人件費の高騰・固定化を招く。つまり、その他の条件が一定であれば、従業員年齢の高齢化は賃金の高騰を招くものの、既存雇用の維持を優先させればそれだけ人件費の余裕分が減少してしまうからだ。

 このとき、生産性が低いものの高給取りの労働者を容易に解雇できれば事情は異なる。例えば、年収800万円の生産性の合わない労働者を解雇して、年収350万円で、その年収に見合うかもしくはそれ以上の生産性を持った労働者を雇用できれば、企業としては人件費が浮かせることが可能となる。特に、景気後退期においては有能だが職のない人が多くいるので、そうした人材を雇用しやすい環境にあるだろう。


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