2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2020年12月21日

ロシアが納得できるような裁定になって良かった

 その一方、このロシアに対するCASの裁定に日本の東京五輪に関わる関係者の間では「歓迎」の意思を示す声がナゼか根強いという。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の関係者は「開催する立場の日本側としても『ロシアが納得できるような裁定になって本当に良かった』と多くの関係者が胸を撫で下ろしている」と打ち明け、その理由をこう補足している。

 「WADAの姿勢に反発するロシアのドーピング問題が長引き、CASの裁定でも落着しなければ東京五輪にも大きな悪影響を及ぼす危険性があった。個人参加すら認められない、あるいは個人参加が認められてもWADAのジャッジが基本的に生かされる形の裁定となっていたらロシア側が強い不満を訴え、国際社会に抗議する意味も込めて東京五輪参加をボイコットするのではないかとのウワサも浮上していたからです。

 もしロシアの選手たちが不参加になったら、東京五輪への注目度、加えて大会の権威そのものも大きく下がってしまうことはどうしても否めない。たとえロシアがドーピングで問題提起されていても、無関係とされている選手まで参加しないことになれば国際大会としてのレベルは大きく下がってしまう。たたでさえコロナ禍で東京五輪開催に反対する意見が多い中、仮にロシアの全代表選手が参加しないことが決まってしまったら、ますます『開催する意味はない』という中止派の主張に拍車がかかっていたことは必至です。だから国でなく個人の形になっても、ロシア選手の東京五輪参加が認められたことは歓迎」

 今現在でもコロナショックで逆風にさいなまれっ放しの東京五輪が、かつてのモスクワ五輪やロサンゼルス五輪などのように大国不参加によって多くのメダル候補の選手たちを欠く大会となってしまったら、それこそ目も当てられない状況へ追い込まれる。

 大会運営側、さらにはスポンサーサイドも「何とかロシアにとって悪い方向にだけは傾いてほしくなかった」というのが本音だろう。前出の関係者も「CASの裁定はロシアだけでなく、東京五輪を開催する日本側やIOC、そして東京五輪の世界的な有力スポンサーに対しても忖度した結果でしょう」と分析している。

 CAS側はロシアの処分軽減に至った経緯を「次世代にクリーンな国際スポーツへの参加を促す必要性を考慮した」と説明している。ただ、非常にあいまいな感は拭えない。ここに来てロシアの大甘裁定を歓迎する日本側の間接的な〝圧力〟が功を奏したとする疑念も生じていることから、キナ臭さがプンプンだ。その中心にある東京五輪は新型コロナウイルスの感染爆発などどこ吹く風で「開催ありき」のまま、どんどんおかしな方向へ突き進みつつあるような気がしてならない。

  
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