米カリフォルニア州が世界でも初となる、ガス供給廃止、オール電化への道を歩み始めた。同州によると州内の温室効果ガスのおよそ1割が天然ガス燃焼によるもので、2045年までに脱炭素化を図る独自の環境政策により、ガス廃止に向けての方針が固まった。
同州のエネルギー委員会では住宅の建築規制にガスの使用禁止を加える方針で、早ければ2023年にも実現する。すでに2019年から新規に建設される住宅にはソーラーパネルの設置が義務付けられているが、さらにガス設備の廃止となればオール電化住宅のみが建設を許可されることになる。その後規制は商業ビルなどにも適用される予定だ。
住宅でのガス利用、といえばオーブンや洗濯乾燥機などの一部家電と暖房、温水供給が主となる。そのため住宅デベロッパーだけではなく家電メーカー、暖房機メーカーなどからの反発も予想される。州としては本格的な規制に入る前に、まずデベロッパーなどにオール電化住宅を建設することでインセンティブを与える、などのソフトなアプローチを行う予定だという。
州内ではすでに独自に新規建設の住宅にガスを供給しない自治体もあり、ガスの利用を何らかの形で規制する自治体は40以上に上る。またガス会社も多くは半公営事業のため、「州政府のガイドラインに従う」ことを表明している。民間企業でも、サンフランシスコを含む北カリフォルニアに電力、ガスを供給するPG&E社は「将来使われることがなくなる可能性のあるガス関連設備に新たな投資を行わない」としている。
ただし同州で最大のガス会社であり、ロサンゼルスを含む南カリフォルニアにガスを供給するサザン・カリフォルニア・ガスは、昨年7月エネルギー委員会を提訴した。ガスの有用性について過小に評価し、公正さを欠く報告書をまとめた、というのがその理由だ。訴状には「カリフォルニアエネルギー委員会は州の複雑なエネルギー需要に対応するためのバランスの取れたアプローチ(天然ガスを含む)を行う義務がある」と記されている。
また天然ガス(CNG)はバス、トラックの燃料としても利用されており、ガソリンやディーゼルよりも低公害である、として多くの自治体がCNG車両を採用している。サザン・カリフォルニア・ガスはこのカリフォルニア・ナチュラル・ガス車両連盟の設立にも絡んでおり、連盟はカリフォルニア州の大気資源管理局を提訴した。理由は大気資源管理局が打ち出しているアドバンスド・クリーン・トラック規制だ。
このトラック規制は2024年以降に州内で販売される中型から大型の商用車両に対し、無公害車両を一定のパーセントで含むことを義務付けるもので、最終的には乗用車と同様に州内でのガソリン・ディーゼル・天然ガスなどの化石燃料を使った商用車の走行を禁止することになる。連盟では「急速な燃料電池や電気自動車への移行は、短期間に水素や電気のチャージインフラを大量に建設することになり、それが却って環境への負荷となる」と訴えている。