「死ぬ気で戦え」
トランプ大統領は議会占拠事件が起きる前、ホワイトハウス前の集会で支持者らに約1時間にわたって「自分が圧勝していたのに、選挙が盗まれた」と陰謀論の持論を展開、議会に通じるペンシルベニア通りを行進し、バイデン氏勝利確定の審議に抗議するよう呼び掛けた。大統領は演説の中で「死ぬ気で戦え」とまで煽った。
メディアによると、集会には大統領の個人弁護士のジュリアーニ氏や息子たちも参加して演説した。それぞれ「戦闘で試してみよう」(ジュリアーニ氏)「気概を示せ。議会まで行進しなければならない」(次男のエリック氏)などと扇情的な発言が相次いだ。支持者らがこうした発言に触発されたのは間違いないところだろう。
襲撃事件後、トランプ氏は当初、しばらくは沈黙し続けた。しかし、国内ばかりか、英国など海外からも厳しい批判が沸き起こったことで、事の重大性に気付いたのか、6日夜になって1分間の動画を発表。議会を占拠した暴徒を非難するどころか、「特別な人たち」と呼び、「みんなの気持ちは分かるが、法と秩序が必要だ。帰宅するように」と訴えた。
トランプ氏は7日になって、投稿凍結が解除されたツイッターに2分半の動画を発表。議会侵入を「悪質な暴力」などとやっと非難する一方で、新政権が20日に発足するとして初めて敗北を宣言した。大統領は「素晴らしい私の支持者たちが失望していることは分かっている。だが、われわれの旅が始まったばかりであることも知ってほしい」となだめた。
大統領は2024年の次期大統領選挙への出馬を検討しており、次のステージの政治活動を示唆することで、支持者の期待をつなぎとめようとしたと受け止められている。だがワシントン・ポストによると、ワシントンの連邦検事は議会占拠事件では、トランプ大統領の扇動も捜査対象になることを明らかにしており、退任後の同氏に対する容疑が1つ増えた形だ。
米紙によると、トランプ氏はここ数日、自身の恩赦が可能かどうか、側近らと協議しているというが、今回の扇動の容疑を念頭に置いたものかは明らかではない。大統領を支持する右派メディアなどの間では、議会を襲撃したのは、極左集団の「アンティファ」がトランプ支持者を装って実行したもの、との陰謀論があふれ、トランプ擁護論も強まっている。
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