世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年1月22日

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 ラテンアメリカではパンデミックが既存の政治家層に対する不満を増大させており、各国の大統領選挙でポピュリスト候補が当選する可能性を強めているように見える。

johavel / VectorMine / iStock / Getty Images Plu

 世論調査によると、貧困層への多額の現金給付とロックダウンへの強い反対により支持率を押し上げている強権派リーダーのブラジルのボルソナーロ大統領を例外として、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア、エクアドル、チリでは大統領が軒並み国民の支持を失い、支持率が著しく低迷している。

 フィナンシャル・タイムズ紙のストット編集委員は、1月5日付けの解説記事‘Populists sense opportunity as Latin Americans lose faith in leaders’で、世論調査の結果について「COVID19が長期に渡り影響を及ぼすラテンアメリカの民主主義の将来にとって厄介な兆候を示す。特に若者の間での民主主義への好感度が目に見えて低下していることは、抗議活動への支持と支配階級への不満の高まりと相まって、政治的にかなり不安定な時期を迎えることを示唆している。このような状況は新たな政治家を待望するものであり、市民社会の新世代のリーダーたちは政治を変えたいと思っている」と指摘している。

 今年は、2月にエクアドル、3月にホンジュラス、4月にペルー、11月にチリ及びニカラグアで大統領選挙と議会選挙が予定されており、エルサルバドル、メキシコ、アルゼンチンでは議会の中間選挙が行われる。そして2024年までに中南米各国の現職大統領は全て任期を迎えるが、これらの選挙にポピュリズムの影響が色濃く及ぶことが予想される。

 もともと、ラテンアメリカにおいては、改善されない治安問題と汚職が既存の政治家に対する不信を招き、経済低迷と拡大する国内の経済格差を背景にポピュリズムを受け入れる素地が熟していたと言える。トランプの登場でさらに刺激された面もあったであろう。そしてパンデミック対策で、議会自体がポピュリスト化し、既に多くの政府が貧困層に対する支援策として様々なバラマキ政策を始めている。アルゼンチンやボリビアでは富裕層に対する増税措置もとられている。

 今年の中南米諸国の大統領選挙では、パンデミック対策に関するポピュリスト的公約を競い合うような選挙運動となり、チリやエクアドルでは左派政権の復活の可能性が高いように見える。

 今年は米国が米州サミットの開催国でもあり、民主党系有識者等は、ラテンアメリカ外交に経験が深く中央アメリカについて具体策も既にもっているバイデンが対ラテンアメリカ米外交を立て直し、地域における米国の求心力を高めることを期待している向きもある。しかし、バイデンが直面するのはトランプの置き土産のようなポピュリズムが跋扈するラテンアメリカであり、また、左右の分断が進み一部の国は再度左傾化し反米的な傾向を強める可能性がある。

  
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