「目に見えない」疑惑 vs.「目に見える」事件
トランプ弾劾裁判では民主党の下院議員が弾劾管理人(検事役に相当)になります。ウクライナ疑惑を巡るトランプ弾劾裁判では証人を招き、民主党は説得力のある議論をしたのにもかかわらず敗れました。その原因の1つは、ウクライナ疑惑が米国民にとって「目に見えない」疑惑だらかです。
これに対して、米連邦議会議事堂乱入事件は「目に見える」事件です。米国民はトランプ支持の赤い帽子(通称MAGAハット)を被った暴徒並びにQアノンの信者が議会を占拠する様子を、テレビ及びインターネットを通じて繰り返し観ました。弾劾管理人はビジュアルに訴える大きなアドバンテージを得ました。
加えてワーキン・カストロ下院議員(民主党・南部テキサス州)、テッド・リエン下院議員(同党・西部カリフォルニア州)並びにジョー・ネグース下院議員(同党・西部コロラド州)を含めた9人の弾劾管理人は、現場で乱入事件を経験しています。弾劾管理人が証人でもある訳です。これも民主党にとって強みになっています。
トランプ大統領は米議会議事堂を襲撃した暴徒は左派の「アンティファ」であったと議論して、共和党下院トップのケビン・マッカーシー院内総務を説得しようとしましたが、反発を買いました。トランプ氏の「もう1つの真実(ウソ)」はもはや通用しません。襲撃を受けた共和党議員も証人だからです。
仮に弾劾管理人が暴徒から議員とスタッフを守った議会警察を証人に呼べば、かなり生々しい証言を行うはずです。米ワシントン・ポスト紙は、前回のトランプ弾劾裁判で大統領弁護団を務めたパット・シポロン氏及びジェイ・セクロウ氏は弁護団に入る意思はないと周囲に明かしていると報じています。おそらくトランプ大統領に勝ち目がないと読んでいるのでしょう。
今回のトランプ弾劾裁判では、議長は連邦最高裁のジョン・ロバーツ首席判事ではなく、カマラ・ハリス次期副大統領になる可能性が高いです。これも民主党にとってアドバンテージになります。