2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2021年1月20日

就任直後は政策転換の発言も

 菅首相は7年8カ月余に及ぶ第2次安倍内閣で、官房長官として首相を支えてきた側近だ。この間の経緯を熟知しているだろうから、自ら首相に就任した後の対露交渉にどう臨むか注目された。

 首相は安倍退陣をうけて自民党総裁に選出された2020年9月14日の記者会見で、北方領土問題について聞かれ、「以前から言っているように4島の帰属問題を解決して交渉を進めるということだ」と述べ、「2島」にも「シンガポール」にも触れず、「4島の帰属」を明言した。

 首相就任後の2020年10月26日、初めての臨時国会召集日の所信表明演説でも、「平和条約を含む日露関係全体の発展を目指す」と述べるにとどめ、「シンガポール合意」「日ソ共同宣言を基礎」といった言葉は慎重に避けた。政策転換を検討していることをうかがわせたた。

 しかし、その3日後、10月26日の参院代表質問での首相答弁には明らかに変化が生じた。 

 首相は立憲民主党の福山哲郎幹事長に対し「北方領土はわが国が主権を有する島々」「平和条約交渉は4島の帰属問題」など従来方針にこだわるような表現を用いながらも、9月29日にプーチン大統領と電話協議したことに言及。「56年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を継続させることをあらためて確認した」と説明し、大統領からあらゆる問題を話し合いたいと表明があったとも紹介した。

 「確認」したからには実行が必要だろうから、首相が「2島返還」を内容とする56年宣言に基づいて交渉するという姿勢に傾いていることが、これで明らかになった。

 それに続く今回の施政方針演説だ。昨年の所信表明からさらに踏み込んで「シンガポール会談のやりとりは引き継いでいる」というのだから、菅内閣としても「2島返還」を目指すと宣言したも同然だろう。


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