2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2021年1月20日

外相は共同経済活動推進に意欲

 驚いたのは茂木外相の外交演説だ。外相は、首相同様、シンガポール会談でのやりとりを「しっかり引き継いでいる」と強調、「北方4島における共同経済活動の更なる具体化に向けた取組みなどを進展させる」と表明した。

 「共同経済活動」は2016(平成28)年12月、安倍首相とプーチン大統領が安倍氏の地元、山口県長門で行った首脳会談で実施が決まった。海産物の増殖、風力発電導入など5事業が対象。観光ツアー、ごみ処理はすでに試験的に行われている。

 不法に奪った領土を返還せず、居座っているロシア相手に「共同経済活動の更なる具体化」を進めるというのは正常な判断とは到底思えない。「悪い冗談」(産経新聞「主張」、2020年12月7日)などで済むものではなく国益を大きく損なう愚策というべきだろう。

 それにしても、なぜこの期に及んで2島返還をめざすのだろう。

 さきに触れたが、ロシアは2019年の年明けから、シンガポール合意などなかったかのように不誠実な態度に先祖帰りしている。

 ラブロフ外相は2019年1月、モスクワで行われた河野外相(当時、現行政・規制改革担当相)との会談で北方領土について、「第2次大戦の結果、ロシア領となった。日本がこれを認めない限り交渉は進展しない」と〝珍説〟を持ちだし協議を難渋させた。

 ロシアは大戦末期、有効だった日ソ中立条約に違反して旧満州に攻め込み、日本の降伏後、どさくさに紛れて日本固有の領土である北方4島を不法に占拠、その後もそれを続けている。4島が「ロシア領」になったことなど一度もない。いわば凶器を手にした火事場泥棒が不法に居座っているだけだ。

 プーチン大統領自身、2019年6月、各国主要通信社との会見で、日米安保条約が存在する限り、北方領土返還は難しいと日本の要求を拒否。2020年7月には、憲法改正で「領土の割譲」「領土の交渉」が禁止されてしまった。このほかにも戦車、ミサイルなど最新兵器の4島への配備などロシアが返還の意思を持たないことのあらわれである行動は枚挙にいとまがない。


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