2024年12月7日(土)

From LA

2021年1月21日

(AdrianHancu/gettyimages)

 テスラがユニークな人材募集を行っている。職務名は「エネルギー・カスタマー・サービス・スペシャリスト」だが、実際には「イーロン・マスクをソーシャルメディアによるバッシングから守る」ことが職務として要求されている。

 ポジションはリモート、正社員で、「1年以上のコールセンター勤務経験者が望ましい」となっている。仕事内容はほぼ通常のカスタマーサービスなのだが、目を引くのが「適切なチャンネルを通してクレームを処理し、CEOに対するソーシャル・メディアのエスカレーションに対応する」という部分だ。

 つまり家でリモートワークをしながら、常にSNSをチェック、マスク氏に対する個人攻撃やマスク氏のツイッターなどで炎上が見られた場合に火消し役を務める、ということだ。マスク氏はたびたびSNSで「失言」を行い、特に株価に影響をもたらした、として政府から罰金支払いを命じられたこともある。タイで起きた少年の洞窟からの救出事件では、英国のダイバーを「小児性愛者」と呼んで訴えられたことも記憶に新しい。

 しかもマスク氏は、毎日のようにツイートしているし、その内容を揶揄するような書き込み対して自ら噛み付くこともある。そのため「3つも会社を経営している人物がよくそれだけSNSに貼り付いていられる」と揶揄され、それにまた反論し、とキリがない。

 一方で会社は成長を続け、今年はテキサス州のギガバッテリー工場もオープン予定だ。テスラ社では現在100以上のポジションで求人を展開しており、まさに会社内は大わらわという状況。マスク氏も今まで以上に忙しく、SNSを自分でじっくりと見る時間も限定されそうだ。

 もちろんマスク氏は批判には免疫がある。米国の会社経営者の中でも彼ほど毀誉褒貶の激しい人物はいないだろう。マスク信奉者が多い反面、アンチも多い。それはどこか今年初めに退任となった大統領にも似ている。

 しかし、マスク批判にとどまらずテスラの評判を貶めるような内容に対してはきっちりと対処していく必要がある。それを毎日ネット上で探し出し、対処すべきものに対しては反論なり説明なりをしていき、必要な場合には炎上させて多くの人々の同調を取り込むことも辞さないような、「第三者的視点も持ちつつ、チームワークができる人材」が求められている。


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