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2021年1月17日

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(emyu/gettyimages)

 今年のCESで基調演説を行った米ゼネラル・モータース(GM)のメアリー・バラ会長は、今後5年間で30の新たなEVモデルを出す、など大幅なEVへのシフトを発表した。その核となるのが、同社がアルティメット・バッテリー・システムと呼ぶ新たなバッテリーと、それを組み込んだEV用プラットホームだ。

 同社によれば、アルティメット・バッテリーとは、リチウムイオンバッテリーの3つの要素であるマンガン、ニッケル、コバルトのうち、コバルトの使用量を7割減少させ、代わりにアルミニウムを用いるもの。理由は今後のEV大量生産に合わせ、レアメタルであるコバルトへの依存を減らすことで、よりコストが安く大量のバッテリー供給が可能になるためだ。

 同社では韓国LGと提携し、薄型のバッテリーセルを生産、これを平行に並べることでスペース効率よくモジュールを作り上げる。このモジュールをつなぐことでEVの基礎が出来るが、同社はシングルプラットホームシステム、つまりモジュールの数を増減することでコンパクトカーからピックアップまで、あらゆる種類のEVを同一プラットホームで生産する体制を作る、という。

 これによりコストは40%削減でき、重量は25%減となり、航続走行距離700キロ以上を達成できる、という。さらに今後バッテリーに使用される触媒ケミカルを改良することにより、最終的には1回のチャージで1000キロ近い走行も可能になるという。

各社で続けられる電池の改良

 現在EV用バッテリーの大手は日本のパナソニック、韓国LG、中国CATLだが、テスラはこの3社とそれぞれ提携、さらにテキサスで建設中のギガ・テキサスと呼ばれるバッテリー工場では4680という新型のバッテリーを製造する予定だ。

 4680はシリコンを多用したもので、従来のバッテリーよりも5倍のエネルギー、6倍のパワー、そして航続走行距離を16%伸ばせる可能性がある。またニッケルを多用することでコバルトの使用量がほぼゼロになる。シリコンとニッケルが中心となるため、コストはかなり削減できる。

 テスラによるとキロワット時あたりの生産コストはバッテリーのデザインそのものにより14%カット、さらに製造工程が単純になることでさらに18%のカット、シリコン利用による効率化で5%、レアメタル不使用で12%、またテスラの新しい集約的な車のデザインによるコストカットは7%、と試算上ではあるが現在の半分のコストが実現できる。

 テスラによれば、今後もパナソニック、LG、CATLとの提携は続けるし3社からバッテリーを購入するが、3社が上限のキャパシティで製造したとしてもテスラの需要には追いつかない、という。同社は今後数年間で年率4−50%の成長を見込んでおり、2020年にほぼ50万台を売り上げたから今年は70−75万台、2023年には100万台を見据えている。

 しかもテスラは家庭用のパワーウォール、ソーラールーフ、産業用の大型蓄電システムなども手掛けている。そのため、テスラが必要とする電力は2022年には100ギガワット時だが、2030年には3テラワット時、という途轍もない数字となる。この需要を満たすために、4680バッテリーの開発は必要不可欠なのだという。

 この2つのバッテリーに対抗し、さらに効率を上げられる可能性があるのが、トヨタが中心となり開発が進められている全固体バッテリーだ。全固体とは液体の電解質の代わりに固体を用いる、というもの。それによりエネルギー効率が格段に上がり、またEVの問題点でもある火災が完全に防げるようになる。

 さらに全固体電池は充電時間が早く、劣化も少ない。実現すればコストは現在の3割程度、体積エネルギー密度は3倍、充電時間も3分の1程度になる。まさに夢の技術だが、実現にはまだしばらく時間がかかりそうだ。

 LGの動きを見れば分かるが、テスラにバッテリーを供給する傍ら、GMとは合弁でバッテリー工場を立ち上げ、おそらく現代自動車が開発を手掛ける全固体バッテリーにも協力していくはずだ。この3種類のバッテリーのうち、どれが覇権を握ることになるのか。どれであってもサプライヤーとして対応していこう、という姿勢が見える。

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