メリット低下の「党員」資格を大盤振る舞いか
党大会には、「党中央指導機関メンバー」250人と「党の各組織からの代表者」4750人が参加した。代表者は、党員1300人に1人の比率で選出という規定が公表されたので、それに基づいて計算すると、現在の党員数は600万人超になる。
2016年の前回大会に参加した代表は3667人だが、選出規定は明らかでなかった。今回と同じ基準だったと仮定すれば約480万人。この5年間に党員が100万人以上増えたことになる。
朝鮮労働党の党員数はこれまで、300万人ほどだと考えられてきた。1980年の第6回党大会で、党員1000人当たり1人とされた代表が3220人だったからだ。党員数がいつ大きく増えたのかは不明だが、「先軍政治」を掲げた金正日時代とは考えづらい。党中心の国家運営という体制に戻した金正恩政権になってからと考えるのが自然だろう。
金正日時代の党員数を推測する手がかりはほとんどない。大量の餓死者を出した1990年代後半の「苦難の行軍」期に減少した可能性もあるが、仮に300万人が維持されていたと考えれば、金正恩政権の9年余りで倍増したことになる。直近5年間で100万人増えたとすれば、それほど無理のある推算ではないだろう。
これは、北朝鮮社会における「党員」の性格が従来とは変化したことを示唆している。党員だけで600万人なら、家族を含めた党関係者の数は1000万人を優に超えることになる。北朝鮮の人口は2500万人であり、実に2人に1人は、党員かその家族ということだ。
これでも「党員はエリートで、恵まれた暮らしをしている」と言えるかは疑問だ。北朝鮮では「苦難の行軍」を経て、国家が配給システムを通じて国民生活の面倒を見ることはできなくなった。党員についても従来ほど恩恵を与えることは難しくなっているはずであり、物質的な面でのメリット(党にとってはコスト)は減少している可能性が高い。そうした状況の下で、金正恩は「党員」というステータスを大盤振る舞いしているのかもしれない。
ちなみに人口14億人を抱える中国の共産党員は9191万人(2019年末時点)で、全国民の約6%に過ぎない。
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