2024年12月8日(日)

補講 北朝鮮入門

2020年6月29日

 金正恩国務委員長の妹である金与正・朝鮮労働党第1副部長の台頭が著しい。3代にわたる世襲統治を行っている北朝鮮では、建国の父である金日成主席の直系である「白頭の血統」が神聖視される。さらに今は、4月に重体説が報じられたことで金正恩委員長の体調に改めて関心が集まっている(『金正恩「重篤説」への高まる疑問』)。そうした時期に金与正氏が活発な活動を始めたこともあって、韓国や日本では「金与正が後継者に決まったのではないか」という報道もされた。ただし、『労働新聞』での扱いなどを慎重に検討するなら、少なくとも現時点では後継者説は過大評価だと言わざるをえない。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

 注目されたきっかけは、6月に入ってから金与正氏が韓国を口汚く罵る談話を立て続けに発表したことにある(『まだ続きそうな北朝鮮による文在寅政権揺さぶり』。談話は、国民すべてが読むことを義務づけられる党機関紙『労働新聞』にも掲載された。談話を支持する運動が北朝鮮全国で展開され、これも『労働新聞』の紙面を飾った。『労働新聞』に個人名の談話が掲載されることはあっても、その中で何らかの「指示」が下されたことが明らかになるのは、金日成主席、金正日国防委員長、金正恩国務委員長という歴代の最高指導者に限られていた。最高指導者ではない金与正氏の談話が掲載されたうえ、それを「支持」する運動が展開されるというのは前代未聞のことだ。さらに金与正氏は、南北融和の象徴であった共同連絡事務所の爆破を予告し、数日後には実行に移された。

 それは本当に「後継者説」を裏付けるものなのか、考えてみたい。


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