補講 北朝鮮入門

2020年6月29日

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礒﨑敦仁 (いそざき・あつひと)

慶應義塾大学准教授

1975年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部中退。在学中、上海師範大学で中国語を学ぶ。慶應義塾大学大学院修士課程修了後、ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省専門分析員、警察大学校専門講師、東京大学非常勤講師、ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロウ・ウィルソンセンター客員研究員を歴任。慶應義塾大学専任講師を経て2015年から現職。共編に『北朝鮮と人間の安全保障』(慶應義塾大学出版会、2009年)など。

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

 金正恩国務委員長の妹である金与正・朝鮮労働党第1副部長の台頭が著しい。3代にわたる世襲統治を行っている北朝鮮では、建国の父である金日成主席の直系である「白頭の血統」が神聖視される。さらに今は、4月に重体説が報じられたことで金正恩委員長の体調に改めて関心が集まっている(『金正恩「重篤説」への高まる疑問』)。そうした時期に金与正氏が活発な活動を始めたこともあって、韓国や日本では「金与正が後継者に決まったのではないか」という報道もされた。ただし、『労働新聞』での扱いなどを慎重に検討するなら、少なくとも現時点では後継者説は過大評価だと言わざるをえない。

(代表撮影/ロイター/アフロ)

 注目されたきっかけは、6月に入ってから金与正氏が韓国を口汚く罵る談話を立て続けに発表したことにある(『まだ続きそうな北朝鮮による文在寅政権揺さぶり』。談話は、国民すべてが読むことを義務づけられる党機関紙『労働新聞』にも掲載された。談話を支持する運動が北朝鮮全国で展開され、これも『労働新聞』の紙面を飾った。『労働新聞』に個人名の談話が掲載されることはあっても、その中で何らかの「指示」が下されたことが明らかになるのは、金日成主席、金正日国防委員長、金正恩国務委員長という歴代の最高指導者に限られていた。最高指導者ではない金与正氏の談話が掲載されたうえ、それを「支持」する運動が展開されるというのは前代未聞のことだ。さらに金与正氏は、南北融和の象徴であった共同連絡事務所の爆破を予告し、数日後には実行に移された。

 それは本当に「後継者説」を裏付けるものなのか、考えてみたい。

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