2024年4月23日(火)

WEDGE REPORT

2021年1月28日

セクハラ疑惑、今後も悩まされる?

 名探偵、多羅尾伴内の口上をまねた時に、バイデン氏を「粗忽」と表現したが、それを示すエピソードがいくつかある。

 1988年の大統領選に初めて挑戦した時、演説にイギリス労働党のキノック党首(当時)の論文を無断引用したことを指摘され、予備選が始まる前の1987年秋に早々と撤退に追い込まれた。その後、脳動脈の手術を受け、生死をさまよったこともある。

 学生時代にも、やはり論文の無断引用の疑いをもたれ単位を取り消されたことがあるというから不注意なのか、常習的な盗用なのか疑念をいだかれてもやむを得まい。

 バイデン氏は、引用のルールを知らなかったなどと弁明しているが。

 バイデン氏をめぐっては、大統領選の過程で、セクハラの被害にあったという女性からの訴えを含めていくつかの疑惑が指摘された。

 女性が嫌悪を感じるような接触をした、衣服の中に手を入れて体を触ったなど典型的なセクハラ行為だが、こうなればもはや〝粗忽〟などではすまされまい。

 セクハラ疑惑にからんで、先に触れたトーマス最高裁判事指名公聴会の件が蒸し返され、ヒル教授への態度が礼節を欠いた、承認を急ぐため、判事のセクハラを目撃した証人の喚問要求を退けて上申書提出で済ませたなど、4半世紀も前の問題で、バイデン氏はヒル氏への謝罪に追い込まれた。

 クリントン氏のセクハラ疑惑が、氏の不倫・偽証疑惑に発展、弾劾裁判で無罪評決を受けた後も、ことあるごとに蒸し返されたが、バイデン氏の場合も、そうなる可能性はあろう。

弱さも強さも……「人間バイデン」

 バイデン氏は1月19日、翌日の大統領就任式を控え、地元デラウェア州からワシントンに出発した。地元の人たちにあいさつした際、感極まって落涙。「感傷的になった申し訳ない」と声を詰まらせていた。

 トランプの再選を阻んだヒーローではなく、「人間バイデン」を垣間みせた場面だったが、同時に危うさも感じさせた。アメリカ大統領は人前で涙を見せてはいけない。〝鉄の男〟 であることを求められる。

 バイデン氏もやさしさと強さが同居した〝普通の人〟なのかもしれないが、これからどう強さを発揮していくのだろう。

  
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