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2021年1月5日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 トランプ氏はまだ諦めきれないようだ。次期大統領の就任式まで3週間足らず、1月6日には米議会でバイデン氏当選の選挙結果が承認される見通しであるにもかかわらずだ。

 氏は1月2日、大統領選で僅差で敗れたジョージア州の高官に電話し、自らの勝利を示す証拠を見つけるよう圧力をかけた。従わない場合は、刑事責任を問われるだろうと恫喝した。

 選挙結果が覆る可能性は小さい。

敗北を受け入れられないまま1月20日の任期切れを迎えるトランプ氏が、同日行われるバイデン大統領就任式をボイコット、自らの支持者の集会を開いて次回の大統領選への出馬を表明するのではないかとも取りざたされている。

(Gary Tognoni/gettyimages)

脅したり、おだてたり

 トランプ氏の2日の電話はワシントン・ポスト紙がスクープ、録音テープをネットで公開した。

  「脅したり、おだてたり」(ワシントン・ポスト紙)、1時間にも及ぶ会話の間、大統領はメドウス首席補佐官を侍らせ、ジョージア州での選挙管理の任に当たる州務長官、ブラッド・ラッフェンパーガー氏とその法律顧問、ライアン・ジャーマニー氏に対して、自らの逆転当選に必要な票を見つけ出すよう迫った。

 「1万8000人以上の住所のない(郵便)投票があった。集計されるべきではない票だった」「ジョージア州フルトン・カウンティを中心に25万から30万のトランプ票が、奇怪なことに束になって捨てられた」「少なくとも20万票が偽造された」などと、根拠、証拠のないこれまでの主張をあらためて展開。「私は勝っていた」 と繰り返した。

 そのうえで「ジョージア州の人たちは国民は怒っている。再集計は悪いことではない。私のために1万1800票を見つけだしてほしい」と法外な要求を突き付けた。

 2020年11月3日の大統領選におけるジョージア州でのバイデン、トランプ両候補の得票差は1万1779票。それを一票でも上回る票が見つかれば、自らの逆転勝利につながるという思惑のようだ。 

 州務長官、法律顧問は共和党員であるにもかかわらず、真っ向から反論。「あなたが勝ったという主張には同意しない。われわれは手作業ですべての票を再点検した」「あなたの異議はソーシャルメディアが拡散している虚偽の陰謀論をよりどころとしている。データもまったく正しくない」などと、大統領の要求を突っぱねた。

 怒った大統領は、自分に有利な票がみつからない場合、長官、顧問とも「リスクを背負う」として、刑事責任を追及される可能性にまで言及した。

 話し合いは物別れに終わったが、WP紙などは、公正な選挙結果を違法に覆すことを求める意図なら、むしろ大統領のほうが刑事責任を問われる可能性があるーなどと伝えている。

 トランプ氏は、電話後、ツイッターでジョージア州州務長官らを「私の質問に答える気がないか、能力がない」と非難、怒り心頭の様子だったという。

就任式欠席なら亀裂修復ならず

 バイデン大統領の就任式をトランプ大統領が欠席するのではないかという憶測は、勝利への執着がなお強く、絶望的ともいえる努力を繰り返していることが根拠となって広がった。

 トランプ大統領の任期は1月20日正午まで。その後はバイデン新政権が発足する。

 就任式当日は通常、次期大統領夫妻が現職大統領夫妻をホワイハウスに訪ねて、お茶を飲みながら歓談。その後、新旧大統領がそろって車で議会議事堂に赴き、正午に新大統領が前任者に見守られて宣誓、就任演説をするのがならわしだ。

 前大統領は、式後ワシントンを離れ、人によっては郷里に帰り、一市民に戻る。 

 今回同様新人が現職の再選を阻んだ1993年の政権交代でも、こうした礼儀にかなった光景がみられた。

 現職のブッシュ大統領(共和党)が、アーカンソー州知事のビル・クリントン氏(民主党)に敗れた際、ブッシュ氏は潔く敗戦を認め、クリントン氏の政権引き継ぎチームに全面協力、円滑な政権交代が実現した。

 今回、トランプ氏は積極的に政権交代チームへの協力にも消極的で、バイデン氏から非難されている。

 今回、トランプ大統領が就任式を欠席した場合、就任式当日の午前中にホワイトハウスを離れてフロリダ州の別荘に向かい、新大統領の宣誓、就任演説にあわせて支持者を集め、2024年の大統領選への再挑戦を表明するのではないかともささやかれている。

 就任式への出席問題について、トランプ氏自身はコメントを避けているが、実際にボイコットした場合、いまなおトランプ人気が高いことと相まって、大統領選で深まった亀裂の修復はまったく望めなくなるという悲観的な見方が強い。

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