2022年10月2日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年2月4日

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 新型コロナウイルスの起源についてのWHOの調査団は、武漢で同ウイルスが特定されたときから1年以上たってようやく中国入国が認められたが、中国が十分な協力をしていないことは明らかである。

Denis_prof / iStock / Getty Images Plus

 WHOの調査団の中国への入国には1年もかかった。その間、ウイルスの起源の手掛かりが見つかる可能性はかなり低くなった。新年早々に調査団に入国許可が与えられたが、中国は遅延策を弄し、中国寄りと非難されてきたテドロスWHO事務局長ですら失望を表明するに至った。国際チームが1月14日最終的に武漢に到着した時、中国はさらなる妨害をした。二人の科学者は新型コロナウイルスの抗体検査で陽性と判明し、シンガポールに留め置かれた。残りの13名は武漢で2週間の隔離を命じられた。しかし、調査団の15人すべては出発前の検査で陰性であった。

 調査団は最終的に仕事を始めたが、順調に行ったわけではない。中国政府はWHOチームと「オープンで、透明性がある、責任ある姿勢で協力している」と主張しているが、実際はそうではない。中国は、ウイルスの起源は中国ではない、あるいは起源は一つではないことを繰り返し示唆し、注意を他に向けようとしている。中国の高官は、WHOはスペインなどにも行くべきと示唆した、と報じられている。

 1月20日付けのニューヨーク・タイムズ社説‘The World Deserves Answers From China’は「パンデミックが拡大する中、習近平がいかなる情報も政府のタスク・フォースの決済をとること、許可なく情報を漏らした人は責任を問われることについて直接命令を出した。この結果、ほとんどのことが公になっておらず、WHOのチームはその調査に必要なデータや研究にアクセスできそうにない」、「武漢の海鮮市場は閉鎖され、消毒済みである。この市場からのサンプルや情報は中国の病気統制・防止センターに集められているが、そこの研究者は政府からの許可なく国際チームと話せない」と指摘する。

 発生から今までにかかった時間を考えると、起源の問題は結局謎のままになるのではないかと思われる。中国は共産党の権威を大切にし、「党は間違わない」という建前を守ことに重点を置いている。また、中国起源であることが明らかになれば、損害補償の問題も出てくる。そういう状況を考えると、中国に情報を出させるのは相当難しい。それを実現させるような強い圧力をかけられるのか、疑問がある。

 トランプがWHOから脱退手続きをとり、WHO内での米国の発言権を失うことになったが、その状況で対中圧力をかけることは出来なかった。バイデンは就任した日に米のWHO復帰を決めた。今後、米国を先頭に中国に情報提供圧力を強めて行くということであろう。
 
 それでも成果が上がるとは言えないが、中国のやり方を批判して、中国を孤立させることは悪いことではない。中国はサラミ戦術で小さな譲歩をとって積み重ねて行くことを得意にしているが、この戦術を我々も取り入れていけば良いと思われる。

 豪州はウイルス起源の独立調査を主張したがゆえに、中国により制裁を課され、苦労しているが、豪州の苦境の緩和を図ることも良識ある国の団結を図るという点で重要である。

  
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