2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2021年2月9日

 香港の新型コロナウイルスの感染者は2月6日の時点で感染者1万609人、死者は186人と2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験を生かして、比較的うまく感染拡大を抑えているといっていい。その背景には、飲食ばかりをターゲットにする日本とは違い、業界ごとに細かな政策を実施するほか、ミニロックダウンなど徹底した防疫対策がある。

店の前には体温計やコロナ用追跡アプリのQRコードが掲示されている

業界と対策を細かく分けて状況に応じた方策を打つ

 新型コロナウイルスが広まってからほぼ1年を経過したが、今でも政策について日本政府に失望した国民は多いだろう。特に外食は「急所」と呼ばれ、時短要請に応じる、応じない、政治家の会食による議員の辞任、営業時短による補償問題など、話題に事欠かない。Go To トラベルも感染拡大に寄与し、いつ止めるのかでも揉めた。

 香港は人が動けばウイルスは動いて拡散するという理屈をベースに対策を打っており、公共の場での集まりは最大2人までで、マスク着用義務がある。つまり、4人家族であれば全員一緒に歩けず、2人ずつに分かれて歩くことになるという厳しさをもって感染拡大を抑えようとする。外食だけではなく、ゲームセンター、映画館などといったところがオープンしていれば、そこへ向かって人が移動して、感染リスクが高まることを理解しており、特定の業界に絞るのではなく、各業界に応じて細かな政策を打っている。

 具体的には、ゲームセンター、フィットネスセンター、ケータリング(レストランとバー・パブの2種類ある)、公共のエンターテインメント(テーマパークなど)、ナイトクラブ、カラオケ、スポーツ施設、ホテルなど14のカテゴリーに分けている。そして、マスク着用義務、検温、ソーシャルディスタンス、清掃・消毒、受け入れ人数、パフォーマンスの有無、特別措置などといった対策に分かれている。

飲食の時短について

香港の飲み屋街も人通りは少な目

 例えば、レストランであれば、食事以外の時はマスク着用、入口での検温、テーブル間の距離は1.5メートル、総座席数の50%まで入店可能、1テーブル2人まで、18時から翌朝5時までは店内飲食禁止(テイクアウトは可能)、店内でのライブ禁止といった措置が取られる。日本ではただ19時までのアルコールの提供、20時に閉店というざっくりした措置だけなので大きな差がある。こういった措置が14カテゴリーで細かく定められている。2回目の緊急事態宣言では行動変容が前回よりも行われていないが、こういったきめ細かな対策をすれば、より効果的な行動変容にも繋がるはずだ。

声を上げない各団体

 日本は社会的な圧力が強いせいか、厳しい環境下にいる人が声を上げない。実は先日、香港でこんなことがあった…ウェディング業界だ。今は結婚式の宴会は1テーブル2人の10テーブルまで。つまり最大20人でしか披露宴を開くことができないため、キャンセルや延期が続出している。するとホテル、レストランだけではなく、ウェディングドレスの店など関係者が一堂に集まって記者会見を開き、実情を訴えた。


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