太陽電池価格の急落
Qセルズ社の戦略と業績
2001年に19人で創業したQセルズは、太陽電池で2008年にシェア世界1位になった。日本でも多くのマスコミが成功事例として取り上げたのも、この頃だ。しかし、翌年第4位となり、10年には7位となる。11年にはベストテンから消える。太陽光発電市場は急速な拡大が期待されたために新規参入企業も中国を中心に多く登場し、需要は伸びたもののそれ以上に供給量が増加し、供給過多の状態が続くようになった。要は、生産設備さえあれば新興国企業でも簡単に製造できる製品ということだ。
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新興国企業と競争するために、Qセルズ社も従業員数の削減、マレーシアでの製造開始、太陽電池以外の太陽光発電関連ビジネスの拡大を戦略として打ち出す。この結果、11年には、売上数量は増加する。しかし、売上高は大きく下落する。太陽電池価格が急落したのだ。2011年を通し価格は半分以下になった。新興国企業を中心に生産能力が急増し、供給過剰の状況が続いていることが価格下落の原因だ。世界需要のほぼ2倍の5900万kWの製造能力が現在あると言われている。
Qセルズを初めとする先進国企業の多くは、この価格下落についていけなくなっている。Qセルズも例外ではなかった。業績を表にまとめた。2011年に業績は急速に悪化している。太陽電池以外に事業を拡大したが、急速な価格下落により資金が枯渇することになった。
韓国企業の出資が続く欧米の太陽光発電企業
4月3日に破綻したQセルズは8月29日に、韓国のハンファグループにドイツの製造、開発拠点、マレーシアの製造拠点など事業の大半を譲渡する旨発表した。ドイツの1550名の従業員は1250名に削減されるが、マレーシアの500名の従業員は維持される。正確な譲渡額は発表されていないが、数億ユーロの債務を引き継ぎ、数千万ユーロの現金が支払われる契約とされている。
Qセルズ以外にも、韓国系企業の太陽光発電事業への進出は続いている。2011年11月には、韓国でシリコン系電池の製造を行っているヒュンダイ重工がフランス・セイントゴベインと共同で韓国にCIGS電池工場を建設する旨発表している。CIGS電池は日本でもソーラーフロンティアが宮崎で製造している変換効率の良い化合物系の電池だ。変換効率に優れ、信頼性が高く、今後コストが下がると期待されている。
米国のベンチャー企業にも韓国の出資が続いている。2011年9月には韓国のSKグループによるCIGS技術を持つヘリオボルトに対する5000万ドルの出資が発表されている。やはり、CIGS電池の研究を行っている米国のベンチャー企業スティオン社には、昨年末韓国企業連合が1億3千万ドルの出資を行った。スティオン社は韓国LG系列の液晶製造装置メーカーアヴァコ社と共同で製造装置の開発を行うと発表している。