World Energy Watch

2012年9月14日

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 Qセルズを買収したハンファも、米国で1366テクノロジー、クリスタルソーラー、ワンルーフエネジーなどの太陽光発電技術に関するベンチャー企業に投資している。さらに、蓄電技術にも投資をしており、今年の7月には米国の蓄電池メーカーのサイレントパーワーへの投資を発表し、太陽電池と蓄電池を組み合わせで販売するとしている。

韓国企業の狙いは

 供給過剰な状況が続く太陽電池市場に韓国企業の進出が続くのは何故だろうか。一つは、コストが安く、効率が良いCIGSが今後主流になると見て、その技術を入手することにあるのだろう。韓国企業は中国系企業が強いとされるシリコン系太陽電池ではなく、今後コスト削減が進むとみられているCIGSだけに興味があるようだ。ハンファ傘下になったQセルズ社も昨年11月にCIGS電池効率の世界記録を達成した技術を持っている。中国企業が世界シェアの66%を持つシリコン系で競争する気持ちは、韓国企業にはないのだろう。

 さらに、不当廉売として米国が中国製太陽電池に対して課税を決めたのに続き、9月6日に欧州委員会も中国製電池などについて不当廉売の疑いで審査を開始すると発表したことも韓国企業にとってはチャンスと判断される。米国市場に続き、欧州市場への中国製品の輸出が難しくなると韓国製品にも大きなチャンスが出てくる。後発でも中国製への課税により、課税後の実質的な価格では中国製を凌ぎ欧米市場では戦える。

 蓄電池技術に出資している点も見逃せない。中国企業が持っていない新しい技術と組み合わせることで、コスト面に加えた優位性を築けば、既存の企業に勝てるだろう。

シャープとQセルズは同じか

 液晶と太陽電池という差別化が困難で、価格が購入に際し大きな判断基準になる、付加価値額が低い製品を主体に製造を行っていた点、また新興国企業の参入による製品価格の下落により短期間に赤字に転落した点などシャープとQセルズには共通点が多い。新興国企業の援助を受ける点も似ている。

 一方、両社の売上、従業員数などは異なる。シャープの規模は一桁大きい。製品もシャープはテレビ、液晶、太陽電池で50%だ。携帯などの製造も行っている。しかし、今の液晶、太陽電池の損失は他の商品でカバーできるような状態ではないだろう。結局、新興国企業の助けを借りないと、資金繰りを乗り越えられないのではないか。その額は数百億円では不十分だろう。大きな資産売却を行い、資金繰りを付けるか、それとも大きな出資を受けるか、選択肢は限られている。

 シャープ、Qセルズの現状から学ぶことは多い。まず、新興国企業が直ぐに追い上げることができる製品では、規模の経済を活かしても、製造の基本となるコストが相対的に高くなる先進国での製造では、新興国との競争は無理だ。先進国は、付加価値が高く新興国企業が真似をできない製品の開発を進めるしかない。自社技術に拘らず韓国企業のように技術を持つ企業買収も積極的に行う必要がある。研究開発に対する国の支援も必要だ。国民負担が増え、新興国企業の支援になりかねない再生可能エネルギーの普及に力を入れている場合ではない。新しい技術開発への支援を中心に政策を切り替えないと、日本企業が韓国企業の後ろ姿を追うことになりかねない。


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