World Energy Watch

2012年9月14日

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急激に失われた利益と急増する借入金

シャープの売上原価率の推移
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 数字を見ると危機的な状況がよく分かる。売上高に原材料費を中心とした売上原価の占める比率が急速に上昇しているのだ。売上原価に加え、他に人件費、交通費などの販売費・一般管理費、借入金の金利などの費用が必要だが、その費用が全く賄えない構造になってしまっている。

 売上高に対する売上原価と販売費・一般管理の比率は07年3月期から図のように推移している。ここにきて原価率が急速に上昇している。13年3月期の第1四半期には99%に上昇し、売上の殆どを原価が占める。シャープでは販売費・一般管理費だけで年間4000億円必要だ。この資金の大半は内部資金を取り崩すか、借り入れるしかないが、そんな内部資金はなく、シャープはコマーシャルペーパー(短期の無担保約束手形)で大半を手当てしている。11年3月末1400億円だった残高は12年6月末には3600億円を超えている。

 テレビ・液晶製品の価格上昇、あるいは大幅な原価削減はありえないだろうから、当分の間外部からの借り入れに頼らざるを得ない状態が続くが、問題は将来返済できる見込みがあると貸し手が判断し、資金提供が続くかということだ。現状のテレビ・液晶に偏った収益構造からかなり先行きは厳しいと格付け機関は判断し、社債が投機的格付けになったということだろう。

液晶と似ている太陽電池

 シャープは何故液晶の収益力を読み誤ったのだろうか。シャープは規模の経済(生産量の増加に伴い利益率が高まること)を考え、亀山、堺に大規模工場を建設した。高品質の液晶を大量に生産しコストを下げることを狙ったのだろう。高品質の液晶であれば、他社より高い価格を得ることができる筈だ。

 しかし、実際には韓国を初めとする新興国企業が大量生産で更に安く製造することができる商品だった。商品の品質の差を考えなければ、土地代も、投資額も、人件費も先進国との比較で安く上がる新興国企業が、先進国企業よりコスト面では有利になる。

 品質の差は需要家にとっては、さほど重要なことでなく価格が重要だった。コストが相対的に安く、価格も安い新興国企業の製品で十分と多くの需要家が判断した。この間の為替も日本企業には不利に働いた。太陽電池でも全く同じことが起こった。シャープは変換効率が優れている太陽電池を大量生産で安く製造することを狙った。

 2008年に葛城工場が稼働を開始した際には、「薄膜太陽電池は12年に640万kW程度の市場になるので、その内半分のシェアを取りたい」としていた。10年に稼働予定であった「堺工場をモデルに600万kWの生産体制を目指す構想を進めている」ともしていた。しかし、市場で実際に起こったことは、液晶と同じだった。コスト競争力のある中国、台湾の企業との競争に先進国の企業は敗れた。その代表はシャープの後、シェア世界1位になったドイツQセルズ社だ。

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